サイトの評価をする上で最も大切なことと4つの評価方法

サイトの価値を正確に評価するための手法をまとめました。収益倍数法を中心に、トラフィック法、DCF法、先行取引比較法、などをわかり易く説明します。

サイトを売りたい、あるいは、あなたのサイトの市場価値を知りたい時あなたはどうしますか?

残念ながら、現在、サイトの評価の統一した基準は確立しておらず、サイト評価やサイト売買の取引価格はサイトの売り手、サイトブローカーが誰かによって大きく異なっているのが実情です。

しかし、サイトの構築あるいは運営に携わっているものとして、サイトを売ったり買ったりするにあたり、サイトの価値の計算方法やその価値を高めるためにはどうすればよいか、などを正しく理解しておきたいところです。

1.サイト評価でサイト売買の成功がきまる

現在、サイト評価の方法として利用されている方法には類似売買評価法、DCF法、収益倍数法などのように不動産評価や企業M&Aの評価方法として長年利用されてきたものもあれば、トラフィック評価法のようにウェブサイト評価ならではの手法もあります。

こられの評価方法は、それぞれの手法を単独で使用するのみでなく、組み合わせることで、サイト評価の精度をあげることができます。

サイトを購入するにあたって、サイト評価は、サイトの購入プロセスの中でもっとも難しい部分です。また、在庫等が存在する場合、サイト評価はより複雑になります。

しかし、それぞれのサイト評価方法の長所と短所を明確に理解し、適切な情報を集めて、正しく計算をすれば、合理的なサイト評価を行うことは可能なことです。公正なサイト評価をするために大切なことを3つあげます。

  1. 評価方法を正しく理解し運用する
  2. 正しい情報に基づいて評価を行う
  3. オーナー、市場動向などサイトの外部要因も含めて判断する

では、これらの大前提を踏まえたうえで、
様々なサイト評価の手法を見ていきましょう。

2.サイトの評価手法:ディスカウントキャッシュフロー法

ビジネスを評価するための最も徹底的な方法の1つは、買収先のフリー・キャッシュ・フローを予測し、それらを所定の割引率で割り引くDCF法(ディスカウントキャッシュフロー法)と呼ばれる手法です。

このモデルの理論的根底にあるのは、今日の1ドルが明日1ドル以上の価値があると考える金額の現在価値の理論です。DCFは、予測可能なキャッシュフローを持つ成熟かつ安定したビジネスを評価するために有効な方法です。

残念なことに、これらの前提条件は、最も確立されたインターネット事業にもほぼあてはまりません。月々のキャッシュフローの変動、ビジネスモデルの未熟さ、財務データが不十分であることの理由から、DCFはサイト評価においては参考資料にしかならないでしょう。

ここで簡単にディスカウントキャッシュフロー法を使ったサイト評価の方法を説明します。

2−1.ディスカウントキャッシュフロー法を使ったサイト評価の方法

年間の収益キャッシュフローが100万円のサイトがあるとします。割引率は2%で、5年後に売却した場合の売却価格は1,000万円だと予想されます。

年間収益の100万円を5年間2%で割り引いた金額が471万円、5年後に1,000万円でサイトを売却した場合の代金の現在価格が980万円ですから、このサイトの現在価値は1,452万円です。

このサイトを900万円で購入したとすれば、5年間で552万円(1,452万円-900万円)の利益をあげることができる計算になります。

DCF法で計算したサイト評価額の例

割引率

2%

(単位:万円)

現在価値

Y1

Y2

Y3

Y4

Y5

年間キャッシュフロー

471

100

100

100

100

100

売却価格

980

1,000

合計

1,452

100

100

100

100

1,100

3.サイトの評価手法:先行取引比較法

同様の企業の買収例と比較する方法は、ビジネスの評価の手法として従来からあるアプローチです。通常、単独で評価の基準として使用されるのではなく、DCF(または他の方法)に対するチェック手段として使用されます。

先行取引比較法は収益倍数法の簡便法であるということもできます。

収益倍数法の倍数は、様々な局面からサイトを分析して決定されますが、先行取引非核法では、先行取引の倍数をそのまま使用します。

先行取引比較法では先行取引の利益指標を特定し、そこから利益倍数を逆算、そのようにして求めた倍数を評価対象となるサイトの利益指標に乗じてサイト評価額を計算する方法です。

3−1.先行取引比較法を使った評価方法

まず、評価しようとしているサイトの事業モデルと規模から比較対象となる先行取引を特定し、次に先行取引の利益指標は何かを特定します。

先行取引の利益指標が月次収益、月次キャッシュフロー、EBIT、EBITDA、あるいはその他どのような利益指標が使われたのかが判明すれば、先行取引の売買価格を使用された利益指標で割って先行取引で使われた倍数を計算することができます。

ただし、正確な先例取引分析をするためには先行取引のデータへ直接アクセスすることができなければなりません。

公開企業の状況では、この種の情報は豊富ですが、プライベートM&Aの世界、特にインターネットビジネスM&Aの初期段階では、取引データは公開されてはいません。

インターネットで公開されている取引データをもとに分析する方法もありますが、その場合は信ぴょう性の高いサイト評価になるとは言えないでしょう。

4.サイトの評価手法:トラフィック評価法

ウェブサイトの価値を判断するもう1つの方法、特に収益化されていないがトラフィックがあるサイトの価値をはかるのに有効なのがトラフィック評価法です。

まず、サイトへの検索トラフィックの大部分を占めるトップキーワードを調べます。

次に、キーワードのクリック単価を特定します。

たとえば、サイトにトラフィックの90%以上を誘導する3つの重要なキーワードがある場合は、Google Adwordsでクリック単価を見つけ、そのキーワードごとにサイトを訪れた訪問者数を掛けて広告収入の予想額を計算します。

トラフィック評価方法は、広告収入を収入源とするサイトの価値を評価する際に役立ちますが、その他の事業収入を評価するのには、適切とはいえません。

ソフトウェアやSaaSビジネスなど、収益をトラフィックに依存していないWebサイトは、トラフィック評価法を使用すると適正価格より大幅に低く評価されます。

5.サイトの評価手法:収益倍数法

もっとも大切な評価方法である、収益倍数法を説明します。

収益倍数法は、小規模サイトM&Aで最も一般的な評価法です。海外のサイトM&Aでは、サイトの年間収益の1.5倍から4倍の間で、日本のサイトM&Aでは、サイト月間収益の約10倍で成立する取引が多いようです。

収益の倍数で企業価値を表すという手法は、小規模ビジネスに限ることなく、公開企業の財務分析にも従来から使われてきました。

キャッシュフローベースの企業評価で使われるEV/EBITDA、EV/Sales、株式価値の指標として使われるPEなども企業価値を利益の倍数で表した指標であり、収益倍数法と同じ考え方に基づいていることがわかります。

インターネットビジネスの世界では、様々な財務データやそれに類するデータが存在するにも拘わらず、そのシンプルさとわかり易さによって、収益倍数法にますます重点が置かれています。

収益倍数法では、サイト収益に事業に、その事業の価値をはかるのに適した倍数を掛けて、サイト評価額としています。

倍数の設定に、売り手と買い手がサイトをどう評価しているかが集約されることになります。倍数をいくつにするかについて、当事者の双方が合意すれば、取引が成立することになります。

収益倍数法で重要なことは2つあります。それは、収益性の定義-収益性をどう定義するかと収益倍数の設定-収益の倍数に影響を与える要素をどう定義するかの2点です。

5−1.収益性をどう捕らえるか

サイト評価に使われる収益はサイトの総収入からサイトを運営に直接かかる費用を引いたものになります。サイト運営者が複数のサイトを同時に運営している場合には、売却予定のサイトに直接関係する収入と費用を正確に計算しなければなりません。

サイト評価の計算で費用にしないものとあげられるのは、

  • 原価償却費など現金以外の費用
  • 利子収入または費用
  • 非営利の収入および費用

など、所有者本人の報酬、その他の人件費や外注費も状況に応じて見直す必要があります。

サイト収益は本質的に主観的であり、営業支出に「何を含めるあるいは除外すべきか」については、買い手自身の解釈によって異なる可能性があります。

幸運なことに、インターネットビジネスは比較的簡単なコスト構造となっているためサイト収益の見積もりについて、当事者間で意見が食い違う可能性は少なくなっています。

サイト収益が正確に計算されると、次のステップは、適切な収益倍数を設定することです。

5−2.収益倍数法の倍数に影響を与える要因

事業買収の評価は複雑な作業です。サイト買収は、買い手の複数の事業に影響を及ぼす可能性があります。収益倍数法の倍数の査定も主観的なものですから、どの要因が何ポイント倍数を引き上げるという確定した数値はありません。

ただし、サイト売買において重要なポイントは、「収益の移転可能性」「持続可能性」「拡張性」の3点であり、これらの要素を満たす要因が倍数を押し上げるポイントとなります。

サイト評価を評価するにあたって考慮すべき主要な項目を分野ごとにまとめておきます。これらの項目にどのように該当するかによって、サイトの倍数を決定します。

①財務

  • サイトの開設期間
  • 過去1~3年間の総収入と純利益のトレンド
    (開設期間が1年未満の場合はその期間)
  • サイトに財務上の問題が生じたことがありますか?
  • サイトの買い手が継続して同様の収入をあげることができますか?
  • 収益力はどれくらい安定していますか?
  • サイト収益は、売り手の属性に起因していませんか?

②トラフィック

  • 検索によるPVは何パーセントですか?
    (つまり、検索エンジンのアルゴリズムの変更によって潜在的に何パーセントが危険にさらされていますか?)
  • 検索のランキングはどれくらい安定していますか?
  • 昨年のトレンドの間のトラフィックはどのようになっていますか?
    ここ数ヶ月はどうですか?
  • Googleアルゴリズムの変更や手作業によるペナルティを受けていますか?
  • 業界動向はどうですか?
  • リファーラルはどこから来たのですか?それは売却後も継続可能ですか?

③オペレーション

  • 事業を運営するためにはオーナーの時間がどれくらい必要ですか?
  • オーナーの責任は何ですか?高度な技術要件はありますか?
  • ビジネスを運営または管理するためには、どのような技術的知識が必要ですか?
  • 従業員/外注業者が担当している業務がありますか?

④ニッチ

  • ニッチはどれくらい競争力があるのですか?
  • エントリーの障壁は何ですか?
  • ニッチは成長していますか?
  • ニッチの最近の動向と発展は何ですか?
  • どのような拡張オプションが利用できますか?

⑤顧客ベース

  • ビジネスはどこから得られますか?
  • 顧客獲得にどれくらいの費用がかかりますか?
  • 会費・購読料が収入である場合、顧客の生涯価値と解約率はどのくらいですか?
  • 購買頻度はどのくらいですか?彼らは再注文率はどうですか?
  • 既存の顧客にリマーケティングすることは可能ですか?
  • メーリングリストはありますか?

⑥その他

  • ビジネスに物理的な資産や特定の地域における権利義務はありますか?
  • ビジネスを運営するためのライセンス要件はありますか?
  • 商標権を侵害していませんか?
  • 商標などのメリットがありますか?

5−3.収益倍数法の実例

ここでは、実際に旅行ブログサイトの倍数を倍数チェックリストを使用して決めていきます。サイトを評価するにあたって重要な要素は財務の傾向、トラフィック、ニッチ性、管理に必要な時間などです。

様々な要素を細かく分析しながら、経験知を元に倍数を定めていきます。

質問事項

旅行ブログサイト

財務
サイトの開設期間

2年

最近の売上および利益の傾向

緩やかな上昇

サイトの買主に経費削減の余地があるか?

余地あり

財務上過去に問題があったか?

該当なし

トラフィック
オーガニックトラフィックの割合

50%

上位検索の安定度

普通

トラフィック量の傾向

安定

グーグルアルゴリズムの変更の影響

なし

オペレーション
サイト運営者の作業量

1月25時間

サイト運営者の役割

ブログ記事作成

サイト運営に必要な専門知識

なし

従業員の有無と雇用形態

なし

ニッチ分野
ニッチ分野での競争力

高い

参入障壁は高いか

低い

ニッチ分野は成長しているか?

成長している

ニッチ分野の最近の傾向は?

該当なし

成長余地はあるか?

やや高い

顧客ベース
顧客の獲得方法

検索、紹介

顧客獲得コスト

該当なし

継続課金であればLTVはいくらか?

該当なし

単発課金であれば、最購入の割合は?

時々

顧客ベースを受け継ぐことはできるか?

可能

その他
賃料や固定資産は存在するか?

なし

許認可あるいは公的資格は必要か?

なし

トレードマーク等の無形資産があるか?

なし

月額利益倍数

10倍

6.サイトの評価方法 まとめ

サイト評価の手法はまだまだ過渡期で、オンラインビジネスの進化に伴い、これからも様々な手法が開発されてくるものと考えられます。

また、1つの手法でサイトの価値をすべて説明することは難しく、サイト評価の2重チェックという点からもいくつかの手法を組み合わせて、サイト評価を行うべきでしょう。