「精神的苦痛」で「裁判」に勝つ根拠-意外と知らない精神的苦痛を訴える場合の証拠-

精神的苦痛を訴えて、裁判を行う事例があります。パワハラ、痴漢をはじめ、「こんなことをされたら、きっと辛いに違いない」と思える事例なら、大抵争う対象になり得ます。

まずは、その根拠となる法律から、確認してみましょう。民法第710条と第711条です。

(財産以外の損害の賠償)
第七百十条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。
(近親者に対する損害の賠償)
第七百十一条 他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。

今回は、上の民法条文に即した案件を考えることにします。

というのは、例えば、憲法第九条の見直し法案に関して、「戦争に向かっている」という捉え方をして、国を相手取り、「精神的苦痛」を訴えた裁判も存在する訳です。

この辺までカバーしようとすると、対象となる法律の範囲が広くなり過ぎて、焦点がぼやけて来てしまいます。

そこで、パワハラ・劣悪な労働環境等の仕事上の「精神的苦痛」、セクハラ・痴漢等の性的圧力による「精神的苦痛」、近親者の生命の侵害による「精神的苦痛」等の、パーソナルな案件に対する「精神的苦痛」を取り上げて行きます。

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1.労働環境に起因する「精神的苦痛」

パワー・ハラスメント(パワハラ)とは、人事労務用語辞典の解説によると、「職場の上司など権限を持つ者が、立場の弱い部下などに対して、力にものを言わせて無理難題を強要したり、私生活へ介入したり、ときには人権の侵害にあたるような嫌がらせを繰り返し行うこと」を言うとあります。

では、職場に新入社員として配属された時に、長年働いているパートさんに虐められたとします。その時は、社員とパートでは権限は社員の方が上だとしても、現実的にはパートさんが、その職場では上の場合もありますよね?

そういう時は、パワハラとは言わずに、モラハラ(モラル・ハラスメント)と言います。ハラスメントの種類だけでも、33種類あると言われています。

ここでは、詳細は省きますが、それだけ「イヤだ」と感じるシーンは多いということです。

しかし、裁判に訴えようという事例では、男性は、1位パワハラ、2位モラハラ、3位セクハラであるのに対し、女性は、1位パワハラ、2位セクハラ、3位モラハラと、やはり女性への性的圧力は高いと考えた方がいいでしょう。

女性の1位であるパワハラの中には、上司である立場を使って、性的な関係をせまる案件が多数含まれます。

セクハラで上司を訴えたことで、被害女性が会社全体から更なる嫌がらせを受けるような同族系中小企業の事例も多く存在するようです。被害女性からすると二度目の被害なので、セカハラ(セカンド・ハラスメント)という言葉で呼ぶそうです。

一方、男性1位のパワハラが指す内容に関しては、平成24年1月30日に厚生労働省がパワハラの定義を発表しました。「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう」とあります。

それに伴い、厚生労働省のワーキンググループは、パワハラの6つの類型を定義しています。

  1. 身体的な攻撃:暴行・傷害
  2. 精神的な攻撃:脅迫・名誉棄損・侮辱・暴言
  3. 人間関係からの切り離し:隔離・仲間はずし・無視
  4. 過大な要求:業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことを強制する。
  5. 過小な要求:仕事を与えない等
  6. 個の侵害:私的なことに過度に立ち入ること。

上記のような苦痛を受けている場合は、労災認定を受ける事例も多数出て来ています。

労災認定を受ける場合には、大別して3つの要件があります。

  1. 精神障害を発症している。
  2. 発症前おおむね6か月間に業務による強い心理的負荷が認められる。
  3. 職場以外の心理的負荷によって発病したのではない。

ただし、大手企業では、この事例を逆手に取り、パワハラとは呼べないレベルの上司からの注意を受けても、精神障害を発症したからと労災認定が下りる事例が増加しています。

詳しく調べると、実は離婚問題が大きく関与しているような案件も、パワハラにより精神障害を発症したのが離婚の原因である、というような申請書類に対して、企業側も手を打てないという現状があり、難しい問題も内包されているのが実情です。

2.性的圧力に起因する「精神的苦痛」

これは、女性の被害が圧倒的に多いのですが、少し驚いたのが、女性上司から若い男性社員への性的圧力というのも、かなり存在することです。

性的圧力・暴力を受けて、裁判で争う時の証拠には、どんなものがあるのでしょうか?千代田区にある弁護士事務所のパラリーガルに訊いてみました。

彼から聞いた回答によると、「セクハラや痴漢等のショックにより、体や精神状態に異変が起きて精神科の病院へ行ったような場合は、医師が出した診断書は有力な証拠になります。セクハラ等では、その状況を証言してくれる同僚が居ればまず勝てますが、そういうことは誰もいない時に行われることが多いので、証拠が揃えづらいのが実情です。というのも、どのような状況でセクハラが行われたのか、原告側(訴えた方)がいかに上手に説明できるのかに尽きるので、証人や証拠が揃わずに負ける例が多いのも事実です。世間一般には、セクハラは親告罪なので訴えた方(原告側)が有利だ、と言われますが、二人で会う機会を作って証拠を掴もうと思っていたのに、逆に同意の上での行為として、かえってマイナスに評価される事例も多数存在するんです」ということでした。

そして、さらに気を付けた方がいい事として、こんなことも聞きました。

「痴漢行為の場合は、現場で相手を特定できれば、勝てる公算が高くなりますが、セクハラの場合、会社側の弁護士は大抵セクハラをした側につくことが多いのも事実です。セクハラで裁判を起こす側は自分で弁護士との折衝から始まるので、精神的にさらに落ち込むことが増えるようです。もちろん弁護士は丁寧に接しますが、状況を把握するためにどんなことがあったのか、詳しく聞いているうちに、被害者が戦意喪失する場面も数多く見ました」

そういう意味では、性的圧力に起因する「精神的苦痛」は、その準備段階で気持ちが萎えてしまうこともあって、裁判での攻防を始める前に、一つ障壁が存在するということを頭に入れておいた方がいいかも知れません。

3.近親者の生命の侵害又は名誉毀損等に起因する「精神的苦痛」

例えば、お子さんが死亡事故等で亡くなってしまい、精神的に立ち直れず、その加害者側を相手取って裁判を起こす場合等は、原告の近親者で精神的苦痛を感じていることを見ている人を証人に立てれば、証拠として採用されやすいとのことです。

ただ、このような精神的苦痛をどうしたいのかによって、打つ手が変わるそうです。

「損害を賠償しろ(お金を支払え)」、「相手に罰を与えろ」、「もう二度と近寄るな」、「傷心を癒して欲しい」等、何を主張するのかを明確にすることが、裁判で勝つためには必要なことです。

なお、この項目の民法の条文は、損害賠償責任を規定した第709条、名誉毀損に関する第723条あたりが対象法令となります。(名誉棄損の場合、単に金銭の支払いだけでなく、名誉の回復を図れ、という処分もあります)。

基本的に、弁護士にもこの項目は訊いてみましたが、原告側の立証責任があるので、かなりプレゼンテーションとして難しいとのことでした。

きちんと弁護士を立てて争わないと、裁判では勝てない事例も多数あるそうです。

客観的な立証が、感情的になっている当事者には案外難しく、軽く考えていると足下を救われかねないのが、この項目の裁判のようです。

4.「裁判」に向けて、どんな証拠を用意するべきなのか

精神的苦痛を受けた証拠、と言っても、形の有る証拠というのは、案件によってかなり差があります。

労働環境に起因する「精神的苦痛」の場合、精神科の病院へ行き、医師による診断書等の証拠を提出することで、現在の病状の告知という証拠が作りやすいと言えます。

性的圧力に起因する「精神的苦痛」の場合、5W1Hを伝えても、それが原告の精神的苦痛として、どのように影響したかを立証するのが比較的難しいようです。

でも、会社の上司からセクハラを受けた場合、事業主側の責任を追及することも案件によっては出来るそうなので、法律家と相談の上、必要な証拠を揃えることが肝要になります。

慰謝料としての相場は2~300万円だそうです。が、アデランスで起きたセクハラ訴訟のように、和解金1300万円という例もありますので、女性がPTSDになったような事例では、損害賠償責任として会社側の使用者責任(民法715条)、職場環境配慮義務・安全配慮義務違反の債務不履行責任が問われることもあります。

いずれにしても、精神的苦痛だけでは、なかなか難しい案件が身体的苦痛を伴う症状があれば、かなり裁判でも有利になりますので、追い詰められている時は、医師への相談は大切なプロセスとなるようですので、無理をせずに医師の診断を早めに受けておいた方がいいでしょう。

近親者の生命の侵害に起因する「精神的苦痛」の場合、ここでは名誉毀損を含む、上記2項目以外の精神的苦痛は全て扱うこととしましたが、実質的な被害による生活への支障が出る事例(お子さんの死亡に係る両親の、加害者への損害賠償請求等)は、近親者の証言や医師の診断書等が必要です。

また、名誉毀損事例では、それによってどのような被害を受けたのか、という客観的な被害を説明できるか?という部分が重要になります。

5.こんな事例に注意!

パワハラ系の案件は、とにかく医師の診断書が重要な証拠となります。精神的苦痛から身体的苦痛へ変化していれば、勝てる可能性は大きくなります。

セクハラ案件で注意が必要なのは、元々交際していたのに何らかの理由でうまく行かなくなった事例です。

まして、最初は不倫だったような案件では、あまり勝てないようです。関係がこじれて、ストーカー被害を受けているような場合は、ストーカー案件として、具体的な被害を訴えた方がいいでしょう。

精神的苦痛も感じると思いますが、こういう案件は警察へ保護を求めるような行動が必要です。

名誉毀損系の案件は、感情的になりやすく、被害状況の説明が客観的にできていないことが多いそうなので、弁護士等の法律家への相談が重要となります。

以上のように、原告側が被告からどのような被害を受け、精神的苦痛を感じて、それがその後の生活にどのように影響したのかを説明する責任があります。

裁判官にしっかり伝わるように、証拠(診断書や証人等)を集めるようにしてみましょう。その上で、弁護士等の法律家に相談してみることをお勧めします。


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