ここは盲点になりやすい!真のM&A成功のための4つの情報

M&A成功のためには、これという正解はありません。常に情報収集をしながら、成功への経験値を蓄積させる必要があります。

今回は一般的なM&A成功への条件と、「IT」「ステークホルダー」「クロスボーダーM&A」と成功のために盲点になりやすい情報をまとめました。

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1.日本企業におけるM&A成功の条件

ある専門家の調査によれば、日本のM&Aは成功よりも失敗のほうが多いという見方もありますが、実際は株主価値を創出しているという見方もあります。

この章では、M&A成功における一般的な条件について考えていきます。

1−1.企業の組み合わせ

M&Aにおいては、企業のマッチングが非常に重要な条件となります。ある大手の専門仲介業者によれば、よいM&Aマッチングの条件とは、ジナジー効果の発揮、戦略上相互補完的な作用をすること、企業文化が似ている事を挙げています。

それぞれ見ていきます。

①シナジー効果が発揮しやすいこと

M&Aにおいては、シナジー効果を期待する経営者がほとんどです。企業の統合により、1プラス1が3にも4にもなれば、双方の利益が大きいからです。

シナジー効果を発揮するためには、様々な条件が必要ですが、やはり事前調査や経営者同士の理念、方針、利害関係が一致することが必要です。

特に中小企業の場合は、交渉段階で経営者同士が意気投合して個人的な関係を深めて、そのよい流れが従業員に浸透していく例もあります。数字や、戦略上はもちろん、人間関係の相性も重要なポイントと言えるでしょう。

②戦略上の補完的な作用をすること

これは、一方の企業の弱点をM&Aにより相手企業の強みが合わさる事により相互補完的な作用をなすことです。

例えば、国内の販売は強いが、新興国の販売が弱い企業が、東南アジアの新興国に強い販路を持っている企業を買収する事で相互補完的作用が期待できます。

③企業文化が似ていること

これは、M&A成立後の統合作業において重要になります。企業文化は、企業を形成する人材の空気のような目に見えない部分ですが、非常に成功には重要なポイントです。

よく上手くいかない事例では、一方の企業は非常に規律が正しく、数字上の成果を生命視する企業と数字よりはお客さんの満足度を地道に追及する企業とでは、統合後に摩擦が起きるケースもあります。

全く相反する企業文化よりは文化が似ている同士の企業の方が上手くいきやすいでしょう。

1−2.自社企業の把握

特に売却企業に言えることですが、自社の事業内容や、財務内容をよく知っておく必要があります。よく、経営者は細部は従業員に任せて、報告のみ受けているケースもありますが、実情をよく把握する必要があるでしょう。

自社の事業デューデリジェンス、財務デューデリジェンスを通して客観的に把握する事も大切です。そうすれば、売却する際の交渉にも自社の強みもアピールできるでしょう。

さらに経営者だけではなく、従業員も自社の経営計画の数字と業績の数字を把握し、経営者と共有しながら、事業運営していく事がベストです。その際は日頃からの経営理念や経営ビジョンの共有が重要であると言えます。

自社だけではなく、自社に関するあらゆる外部環境の把握も欠かせません。景気動向や業界動向により取引価格は変動していきます。取引するタイミングもしっかりと図る必要があります。

1−3.体制管理

M&Aでの成功条件として自社の体制管理がしっかりと利益を生み出す体制になっているかがポイントとなります。以下ポイントを説明していきます。

①利益を生み出す体制かどうか

部門別や取引先別に計数を把握しているかどうか?独自ノウハウは構築されているか?

営業開拓や、研究開発体制も推進しているかどうかも重要なポイントです。全体的にコスト意識をもっているかどうかも重要と言えるでしょう。

さらに人事体制、評価体制も重要です。統合後も優秀な人材を流出させない体制づくりが求められます。

②コンプライアンス遵守

安心、安全意識をもっているかどうかや、関連法律の認識、教育の実施や、従業員が趣旨を理解しているかどうかも重要です。

2.M&A成功とIT

M&Aを成功させている企業の特長にITの統合で失敗しないという事を挙げる専門家もいます。より効率的にシナジー効果を創出するためには、スムーズなIT統合は欠かせないという見方です。

ITが機能不全に陥れば、統合した新会社に致命的な悪影響を及ぼします。それはITが日常の業務を大きく支えるというだけではなく、M&A失敗の3分の1は双方の企業のITの課題をきちんと認識していなかった事が原因である。というデータもあります。

ITの課題認識の不足は、M&A成約後の頓挫や、イノベーションの機会損失など、その影響は計り知れないものがあると指摘している専門家もいるほど、重要事項になっています。

A.Tカーニーという英国のM&Aコンサルタントによれば、IT統合の方法論を自社で確立しておく必要があると述べています。自社専用のITM&Aプレイブックを準備しておく事が、ビジネスとITの両方での成功を収める事ができると言っています。

プレイブックとはM&Aの関係者が実施しなければならないすべての活動を解説したものです。

M&Aにおける重要なIT戦略は「統合初日にステークホルダ(顧客、従業員、サプライヤー)が混乱しないようにすること」「IT自体が統合に対して効果を発揮する事」「次世代のIT組織モデルの確立」です。

ある欧州のサービス会社は、ターゲット企業のITシステムを自社の基幹システムに取り込むために多額の投資が必要と判断して買収を6ヶ月も遅延しました。

さらにある銀行同士の合併が破談になった理由も両行のシステム接続に想定以上の資金がかかり、合併のメリットが失われるとの判断で破談になったという例もあります。

ITの統合には、通常のM&A合意までの期間より長いのが常です。ITスタッフは統合業務以外にも通常業務に追われているので、時間がないのが現状です。ある欧州銀行の合併で起きた障害は統合後営業開始初日で窓口担当者がシステムにアクセスできずに業務に支障が出たというケースです。

IT統合を対処療法で済ませて、統合後の十分な検討が不足していれば、後々見直しにさらにコスト時間がかかるケースがあります。

2−1.双方のIT組織改革

ITを単なる道具とみている企業は少なくありませんが、M&Aは双方のIT組織能力を向上させる絶好の機会です。アプリ、インフラ、IT人材の統合は必須ですが、コスト削減に注視するあまりにIT組織能力向上機会を損失してしまうケースがあります。

IT組織改革は将来事業のイノベーションを生み出す可能性がありますので、その機会の損失は将来的な大きな痛手となります。

一方でM&A自体を双方のIT組織改革を目的として取り組んだエンジニアリング企業もあります。自社よりも優れたシステム、インフラ、IT人材を取り込む事に成功し、IT組織改革に成功しました。

また米国の消費財企業では、買収先の優秀なITスタッフを自社の人材と置き換え、組織改革を実行して成功しています。

ここに挙げたどの企業例もITが彼らのビジネスの中核を占める重要な資源であることを認識しており、IT資源を獲得するためのM&Aであったということが言えるでしょう。

ここでのポイントはIT部門は交渉段階からM&Aに参画すべきだということです。多くの企業がM&A合意後参画するケースが多いですが、交渉当初から参加するメリットは大いにあります。

デューデリジェンスでもIT部門が参加すれば、より現実的なリスクが認識できますし、合意後にやるべき事も明確になります。

そして、M&A全体のライフサイクルにIT部門は関わるべきであり、ターゲット選定から、デューデリジェンス、計画立案、統合作業、統合効果の実現まで全てを包括的にカバーすべきでしょう。

2−2.業務部門との連携

IT部門単独では、統合作業を進める事はできません。M&Aの成功のためには、関連部門との連携が不可欠です。業務部門のニーズを理解して、調整を進める事が重要です。

IT部門はあらゆる部署が関連するため、連携に失敗すると時間とコストを失うことになります。効率性を向上させて、期間を短縮し、シナジー効果を早期に実現するために実行することが求められています。関連部門との高度なコミュニケーション能力も問われてくるでしょう。

IT部門は統合における新会社全体のハブとして機能する必要があるのです。IT部門としてさらに経験を積む事によってスピードや正確性がアップし、統合における貢献度、シナジー効果の創出は限りなく高まるといえます。

3.ステークホルダーにとってのM&A成功

M&Aは企業間だけではなく、関わる全ての人のとっての成功でなければいけません。全てのステークホルダーが満足してこそ新のM&Aの成功と言えます。ここでいうステークホルダーとは、株主、経営陣、従業員、取引先、顧客などを指します。ではそれぞれの立場で見ていきます。

3−1.各立場でのM&Aの成功とは?

①買い手株主

買い手の株主にとっては、利益や株価、ブランド価値が向上する事が成功と言えるでしょう。買収時の価値を上回る価値を得られれば、買い手株主にとっては利益が得られ成功といえます。

その他にも、M&Aによって海外企業への納品の実現や、取引先の拡大ができれば、機能補完的なM&Aとなり、株主が満足できるケースもあります。その場合は、買い手企業も含めた連結ベースで企業価値が向上しているかどうかが判断基準になるでしょう。

②売り手株主

次に売り手株主ですが、100%売却する場合はできるだけ高い価格で売却する事が成功であると言えるでしょう。

ただし、売却する際には、事業や従業員がどのように活躍しているかが気になる株主もいるので売却の際には一定期間は解雇は行わないという条件をつけるケースがあります。売却した従業員がリストラなどで解雇になると売却を後悔することにもつながるので注意が必要です。

統合した会社が良いパフォーマンスをして、事業価値を向上することが売り手株主にとっても成功といえます。

③経営陣

対象会社の経営陣はM&Aにとって重要な責務を担っている事は言うまでもありません。PMIをしっかりと行い、新株主の元で対象会社の初期段階を立ち上げる必要があります。その他には

  • 従業員の不安を無くし、モチベーションをあげること
  • 取引先や取引銀行の継続的な協力を取り付けること
  • 初年度の業績を計画通りに立ち上げること
  • 中期計画の策定をスムーズに行うこと

これらを実現することが成功といえます。

④従業員

特に売却側の従業員にとっては気持ちの整理がつかないケースがあります。立場や処遇が変わってしまうこともありますし、業務内容も変わる場合もあります。いかに気持ちを切り替えて新体制に向かっていけるかが重要といえます。

新体制にやりがいを見出し、従来以上の仕事に対する熱意と取り組みができた時成功と言えるでしょう。経営陣がそのための理解とサポートを行う必要があります。

中小企業の経営者によっては、長年会社に尽力してくれた従業員こそ最大のステークホルダーとして考える経営者もいます。従業員の安定した雇用を先ず第一に考える経営者も多いです。

⑤取引先

M&Aの形態によっては取引先に影響が出る可能性もあります。仕入先やサプライチェーンが変わるケースもありますが、新株主の元で事業が拡大し、取引の質や量が向上すれば成功と言えるでしょう。

⑥顧客

顧客にとっては、M&Aをきっかけに商品やサービスが向上すれば成功と言えます。さらに価格や品質も重要な条件です。特にリピート顧客や口コミ顧客などは、商品に愛着とこだわりがあるケースがあることからそこを変更しないことがポイントとなります。

4.クロスボーダーM&A

近年の日本企業と海外企業によるM&A案件は増加傾向にあると言われています。高齢化、人口減少による国内市場の縮小を考えると、海外に販路を求めるのは当然の流れと言えますが、一方でクロスボーダーM&Aには、特有の難しさも存在します。

この章では、人材や現地マネジメント、日本企業がグローバル市場で生き残るためにはという観点で説明していきます。

4−1.現地の人材の価値

多くの日本企業が海外現地の製品やライン設備、開発ノウハウ、販売チャンネル、ブランド価値などの資産に目が行きがちですが、現地の人材の価値を忘れてはいけません。現地に根を下ろしている継続的事業運営そのものを舵取りしているのは現地の人材です。

多くの日本企業は海外現地の製品やライン設備、開発ノウハウ、販売チャンネル、ブランド価値などの資産に対してそれを維持、運営していく人材の価値を低く見てしまう傾向があります。そのため、場合によっては、統合後有能な現地社員が大量離職してしまうケースもあります。

特に日本企業が買収側の場合は、日本の文化、風習で現地社員を評価してしまい、現地に有力なコネクションを持つ人材を失ってしまうこともあります。これでは、せっかく獲得した資産も生かせず、継続した事業発展ができません。

一般的に研究開発や顧客への提案、営業、販売といった、人の能力に依存する事業は統合後の現地従業員の一斉退社は絶対に避けたいところです。そのためにも企業理念をしっかりと伝え、現地社員の自尊心を保ち、はっきりとした従業員の利益を理解させることが大切です。

実際の成功例としては、買収したトップ経営者が現地工場のマネージャーに熱心に自社の経営理念を語ったところ人材の維持に繋がったケースがあります。

最近の日本企業の途上国企業買収でも従来の日本の技術力を現地に教えるという方針から、いかに現地の有能な人材を維持させるかが重要な焦点となっているようです。現地の人材の需要をどう取り込むかが鍵になるといえます。

4−2.現地マネジメント

逆に、現地状況は現地の社員がよくわかっているだろうということで現地放任になっていて、本社が内情を全く把握できていなかったというケースもあります。

現地社員は、日本の幹部が来社したときのみ順調にいっているとみせかけて、帰国した後は自分達の好き勝手にやっているというケースです。

報告として上がってくる数字だけでは、見えない重要な部分があります。また途上国であればあるほど、報告体制が甘い場合もあります。日本企業のように報連相を徹底しているわけではありません。

ひどいケースになると従業員が会社の経費を私用に使うケースもあります。現地のトップが関与した悪質なコンプライアンス違反なども突然発覚する可能性も十分にあります。

現地社員の日本本社研修を実施し、日本企業の文化、風習も学ばせる必要もあるでしょう。、信頼のおける人材をトップに据え、現地の状況を日本本社がよく見えるように報告体制を作ることが重要です。

最終的な責任を負うのは本社であり、日本の株主なので早急に手を打つ必要があります。

ある会社では、大胆に権限委譲をして、現地に大きな裁量を任せるかわりに業績には責任をもたせるという方法をとっている会社もあります。またコストのかかる駐在員を廃止して、現地採用の日本人に拠点を任せるといったことも有効でしょう。

いずれにしても、日本のサービス、製品力のみで現地に通用するとはいえません。現地には現地の消費者の好みがあり、傾向があります。いかに製品、価格、人材をローカライズ化できるかが海外企業買収後の課題と言えるでしょう。

今の時代は日本本社から駐在員を送り現地は指示待ちではなく、現地の人材をトップに据えていかに現地に根ざした大胆な事業運営構築ができるかが成功の鍵となっています。もちろん、日本本社がきちんとコントロールするべきラインはクリアにするべきでしょう。

4−3.クロスボーダーM&Aで勝ち残るためには?

最近の潮流としては、成長著しい新興国をターゲットにM&Aを加速させている日本企業ですが、欧米企業を始めとする先進国企業も新興国のM&Aを推進しており、その競争は激しくなる一方です。

欧米だけではなく、例えば電子機器分野でもIT関連企業の集積度が高い台湾、世界的なシェアを獲得している韓国、最近大規模買収を繰り返している中国、市場規模の大きいインドなど、欧米以外でも資本力のあるグローバル企業がアジアにも続出しています。

現時点ではまだ、新興国のマーケット全体の可能性はまだまだ大きなものがありますが、市場が成熟するにしたがって、先進国と同様に勝ち組と負け組がはっきりと分かれてきて勝ち残れる企業は上位数社のみという現象も起きてきています。

各社でパイを分け合うといった従来の方法は通用せず、新興国市場においても欧米、アジア、国内他社との競争の波に一気に飲み込まれるといったケースが出てきます。

そんな中勝ち残るための条件としては、第一にスピード感です。新興国でいち早く、商品やサービスの認知を獲得すれば先進的な消費者にまず受け入れられるチャンスがあります。

そして新しいもの好きな利用者層→一般層に徐々に商品が浸透していくプロセスですが、いかに他社に先駆けて爆発的に普及するポイントまで早く持っていくかが勝負の分かれ目になります。

実は最近話題になっている日本の大企業の有名欧米企業の買収は欧米企業の優れた技術力、ネームバリューを買収する目的がありますが、真の目的はその背後にあると言われています。

すで先駆けて新興国に一定の中間層マーケットシェアを持っている欧米諸国企業の顧客を買うという戦略です。

新興国市場で獲得したいボリュームゾーンを間接的に瞬時に獲得し、グローバル市場において自社の優位性を確立するという戦略は今後有効な戦略の一つと言えます。

5.まとめ

M&Aで成功するためには、組織のマッチングや、自社の把握や組織体制の強化が重要だという事や、盲点になりやすいポイントして、IT組織改革、関係各者のステークホルダーの成功も考慮することが重要です。

さらにクロスボーダーM&Aにおいて、スピード感と最近の欧米諸国企業の買収の目的から説明していきました。

M&Aにはこれといった正解がありません。しかし、これまで多くの企業が失敗と成功を繰り返し、多くの教訓を残してくれました。また今後激しく変化と競争がくりひろげられるグローバルビジネスシーンにおいて成功に必要な情報は変化していくと思われます。

しかし、本質的な部分は今後も変わらないでしょう。特にIT関連やステークホルダーへの対策やスピード感は今後も変わらず重要な要素として対策が必要です。

社内、対象企業、ステークホルダーと常に情報交換をし合い、濃密なコミュニケーションを図りチームとして一体化して立ち向かっていくことが今後のグローバル市場での生き残りの鍵と言えるでしょう。