M&Aの9つのメリットとシナジー効果を検証

M&Aは企業にとって様々なメリットをもたらし、企業課題の解決の有効な手段です。

今回はそのメリットの詳細やデメリット、シナジー効果と言われる相乗効果について様々な観点から説明していきます。

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1.M&Aの9つのメリットとは

M&Aは企業の一つの戦略としていくつかの効果的なメリットをもたらします。ここでは、事業拡大、生産効率の向上など、そのメリットを9つ説明していきます。

1−1.商品、サービス拡充のため

買い手企業が売り手企業の持つ、商品やサービスを買収することにより、自社の商品、サービスラインナップの拡充に繋がり、顧客満足度や事業価値の向上効果が期待できます。

但し、異業種間のM&Aの場合は必ずしもそうならないケースもありますが、企業のネームバリューの向上や全体収益の向上につなげることは可能です。

1−2.事業規模拡大

M&Aにより事業規模が拡大し、効率的な生産量の増大による利益率アップが可能です。これは生産量増大により原材料供給コスト削減、共通、重複設備、人材などからのコスト削減などが実現し、個あたりの平均生産費用が下がることから起こる現象です。

お互いの資源や技術を合わせて駆使することにより生産効率が2倍、3倍と上げることも可能で、利益率が上がることにより事業規模の拡大が期待できるのです。

1−3.周辺分野への進出

例をあげれば製造業において同一製品製造メーカーで、一方は鉄での製品を得意とする企業、一方はアルミに特化した製品を得意としている企業の合併は、同じ製品でも事業分野が広がります。

関連性のある周辺分野での合併はそれぞれの培った技術や知識、経験を生かしての相乗効果が見込め、顧客から見ても事業価値が上がります。

1−4.新規事業への進出

異業種間のM&Aは難しさがあると言われていますが、成功すれば、大きな収益源になります。

しかし、先進国の間では人気が落ちているという見方もあります。期待した相乗効果が見られず、グループの収益悪化につながるケースもあるとの見方もあります。

1−5.売り手企業から技術、人材、設備などの補完

特に製造関係などの機械設備が必要な事業は、0から整えていくのは時間やコストがかかります。そこでM&Aにより買い手企業が売り手企業が有している設備、人材、技術などを買収すれば、0からたちあげるよりはるかにスピードを持って対応ができます。

現代のスピードが重視されるビジネスシーンでは有効な時間を買うのと同じ意味を持ちます。

1−6.ライバル企業の買収による市場シェア拡大

競合しているライバル会社買収により、ライバル会社についている顧客や消費者も傘下に収めることができるメリットがあります。

それにより自社のシェア拡大につながり、市場支配率の向上につながり、市場での影響力が増します。

市場支配力の向上は価格決定を限界費用より高く設定することも可能になり、優位に事業を進めることができます。言い換えると市場の独占状態に近づくという状態です。

これが実現すれば、寡占状態に近づく為、市場価格の上昇につながりやすいといえます。

市場価格が上昇すれば利益率UPに直結します。

この分かりやすい例が米国での航空産業でのM&Aです。あるM&Aに成功した航空会社は合併前と比較して9.44%の運賃UPを実行して利益率を高めています。

航空業界は他に代替が効きにくい業界であることも影響して、市場支配率を上げて高い需要を維持し、かつ利益率UPにも成功しています。

1−7.川上、川下企業との垂直合併による効率化

垂直合併とは、生産の異なる段階で従事する企業の統合です。例えば自動車産業で言えば、自動車部品、原材料などにあたります。

これにより、双方の利害関係での軋轢解消やスムーズに完成品を顧客にとどけることができるなど、事業のスピードがあがるといえるでしょう。

1−8.廃業より税制面での有利

売り手の業績が順調で含み益がある場合は、もし何らかの事情で廃業する場合は法人税、事業税と累進課税がかかります。一方株式譲渡の場合だと、株式売却による所得税のみで税制上有利だと言えます。

中小企業の経営者が景気の先行きも不安定だし、後継者もいないから事業をたたもうと考えている経営者もいるようですが、M&Aを有効活用して事業譲渡をすることにより廃業よりも従業員や経営者にとっても取引先や顧客にとっても大きなメリットがあるケースがあります。

また中小企業にとっては、自社より大きな企業の傘下に入ることにより、販売力UPにより経営の安定、発展も見込めるメリットがあります。

1−9.キャピタルゲイン効果

潜在能力のある企業を買収し、さらに買収した企業を育て上げ、第三者へ高額で売却するといった投資としての効果も期待できます。これは買収する企業の強みを生かすことが得意な企業や、育成にノウハウがある企業には有効です。

 

以上の9つにメリットをまとめましたが、傾向として合併、買収の形として、水平合併(同業)、垂直合併(川上、川下にあたる企業との合併)の方がうまく効果が得られる場合が多いという専門家もいますが、大きな資本力をもつ大企業は果敢に異業種へのM&Aをする企業もあります。

2.M&Aの6つのデメリットとは

一方、M&Aにはデメリットも存在します。デメリットは以下にまとめました。

2−1.想定外のシナジー効果

買収側はM&A前に高いシナジー効果を期待して買収したにも関わらず、結果的には想定以下のシナジー効果しか得られなかったという可能性もあります。双方の事業計画通りに進むことは難しく、再度M&A後に事業計画を立て直すことになる場合もあります。

2−2.事業運営力低下、離職

M&A後、買収側の企業が経営陣を送ったにも関わらず、売却側の従業員と方針が合わず事業運営が低下する可能性も考えられます。最悪の場合は企業文化の融合が困難になることや、労務関係の違いから従業員の大量離職につながるケースもあります。

2−3.想定外の低い利益

買収側が巨額の資金を投入したにも関わらず、また事前調査では明らかにならなかった問題が発覚して、想定以下の利益しか出ないケースもあります。

2−4.雇用問題

売却側企業の従業員が買収側企業と部門が被る人材のコスト削減からリストラなどの雇用解除や、労働条件が変更になる可能性があります。

2−5.想定外の資産等の発覚

売却側の会社に簿外の債務や負債、買収側が引き継ぎたくない資産などがあるケースがあります。特に簿外債務は事前に除去できないデメリットがあります。

2−6.株主、経営陣の変更

M&Aによる株式譲渡の場合には、売却側の株主が一族のオーナーから買収側企業になるので、取締役会にて役員も変更され新体制での経営陣発足となります。また業務の引き継ぎをするケースが多く、株式譲渡後すぐには業務から離れなれない状況になります。

3.M&Aのシナジー効果によるメリット

シナジー効果とはM&Aによって乗じる相乗効果のことを指します。

M&Aはお互いの経営資源を合わせることにより、1+1が2にも3にもなる可能性があります。以下詳細に見ていきます。

3−1.M&Aによる「売上」シナジー効果とは?

シナジー効果の特徴は2社以上の企業の経営資源を統合することにより、1社で生じる価値を上回る効果を生み出し、売上を伸ばすことです。M&Aの大きなメリットとして経営者はこの売上シナジー効果を大きく期待して行うケースがあります。

M&Aによる売上シナジー効果は以下が挙げられます。

  1. 同じ市場の顧客に対しての商品サービスの拡充
  2. 販売網の新規獲得(川下への販売拡大)
  3. 営業ノウハウの獲得
  4. ブランド力UP
  5. 商品やサービス開発力のUP
  6. シェア向上による市場での影響力UP、価格への影響力UP

 

②は買収側の製品を売り手の販売網でも販売することによって売り上げUPを期待できます。また販売会社と製造会社のM&Aによりお互いの強みを生かした相互補完も可能になります。

ただ、売上効果は予測が困難な為、あまり大きく算出しないほうが良いと言われています。計算するときは大きく割引いて算出することも必要でしょう。

大企業と小企業の合併に見られることですが、小企業は独自の製品を持っていても営業力や販売網がない場合に、大企業の傘下に入ることによって、販売力が強化され、ブランド力の向上や自社の弱点を補完できる場合があります。

また大企業の持つ経営ノウハウを小企業に浸透させることにより、⑤の商品、サービス開発力のUPも期待できます。

一例としては、売り手企業で今まで製造に特化していて、営業はまるでしたことがないという企業が、合併後営業専門畑の経営者に変わり、販売力をアップさせたと言う事例もあります。

3−2.M&Aによる「コスト削減」シナジー効果とは?

M&Aは合併前の二つの企業がもっていた資源を補完できる時にコスト削減シナジーが起こります。コスト削減シナジーは以下の種類が考えられます。

  1. 仕入れコスト削減
  2. 販売コスト削減
  3. 物流コスト削減
  4. 製造コスト削減
  5. 研究、開発コスト削減(部署の人材数や効率化)

 

①や④の仕入れコストや製造コスト削減では、合併による市場での影響力を増した企業はサプライヤーから仕入れる原材料費の削減が可能です。

理由はサプライヤーも市場で大量の利益を出すことができる企業に販売したいと考えており、多少売価が低くても量でカバーできるという考えがあります。

合併により市場支配力が上がった企業は仕入れのコスト削減で大きなメリットが生じます。

また製造コストでも、同業者同士の合併であれば、人材などの重複資源や設備投資での削減シナジーも見込め、効率的な費用の削減ができます。

⑤の開発、研究部門でも、お互いに重複する部分は削減できますし、削減した部分を新商品の開発に当てることもできます。これは③や④の物流や製造コスト削減にも当てはまります。

例えば同業同士ではないですが、1989年に米国の大手電力会社同士のM&Aがあり、コスト削減の良い成功例があります。

一方は夏の空調需要期に販売のピークを迎え、一方は暖房設備を得意としていたため冬が需要のピークだったそうです。これにより補完作用が起こり年間4,500万ドルもの費用が節約できたという例です。コスト削減シナジーの代表的例と言えます。

また上記には挙げていませんが、買収により本社機能などの間接部門を一つにまとめることによりコスト削減できるケースがあります。本社機能などは合併後に2つ必要ということは稀な為です。

このようにM&Aは様々なコスト削減シナジーが見込めるのです。

3−3.その他のシナジー効果によるメリット

「売上」「コスト削減」以外のシナジー効果についても見ていきましょう。

・経営手法の導入、社員の意識改革

業務の効率化や無駄の排除、企業文化の移植による社員のスキルアップ及び生産性向上も期待できます。

また日産自動車がルノーに買収され、トップが入れ替わり業績が回復したという例もあるように経営手法を改善するという効果もあります。

トップが入れ替わり成功した例の特徴は、社員との密なコミュニケーションによる意識改革や評価制度の改変によりモチベーションがあがった場合に成功につながるケースが多い様です。

・財務力強化

これは財務体制が良い企業同士のM&Aに限りますが、借入余力などの資金調達力が上がったり、低金利で調達できるなど、コストが下がったりすることです。

基本的に信頼がある企業同士のM&Aのケースで、余剰資金を持っていたり、資産を持っている企業同士だと財務シナジーが生まれます。多大な余剰資金を持っている会社が買収対象に選ばれるのは以上の理由からです。

また買収した企業が赤字企業であった場合に、繰越欠損金の利用やのれんの償却で節税効果が出ることがあります。

4.シナジー効果の算出

ここでは一般的なシナジー効果の算出方法について説明していきます。

4−1.算出方法

M&Aの経済効果の算出は、買収による利益と買収にかかる費用によって算出されます。一例としては、買い手企業A,売り手企業Bの価値PVによって以下の計算式が考えられます。

  1. 買収による企業Aの経済効果=PV(A,B)ー(企業AのPV+企業BのPV)
  2. 買収にかかる企業Aの費用=買収資金ー企業BのPV

これに実際の数値を仮に入れて考えてみると、

企業AのPV=5,000百万円

企業BのPV=2,000百万円

企業ABのPV=8,000百万円とすると、①による経済効果は1,000百万円になります。

そして②の買収にかかる費用は2,500百万円かけたとすると、500百万円の費用となります。

4−2.株主への配分とリスク

シナジー効果の金額が明確になれば、それを株主へどう配分するかも重要問題になります。上記の例で言うと、シナジー効果額が1,000百万円に対して買収費用が500百万円となりますので、買収費用の500百万円は企業Bの株主へ配当されることになります。

もし買収費用が1,000百万円だとすれば、企業B株主へ1,000百万円の配当になり、企業Aにはシナジー効果が配分されません。

さらに買収費用が1,200百万円になれば、企業Aの利益はマイナスとなってしまいます。

このようにシナジー効果額に対して、買収額の設定の仕方によっては、両者への経済効果が変わってきます。

企業Aの買収額が大きければ、企業Aの株主は当然反発を起こしますし、売り手企業の株主からは歓迎されるということです。

以上のことから、買い手企業はシナジー効果の算出にしっかりと時間をかけ、専門家に相談しながら進めるべきでしょう。買収側の株主はどの程度の配分が見込めるのかを注視していく必要があります。

あるコンサル会社とドイツのミュンヘン工科大学の共同研究調査によれば、買収側は100%のシナジー効果を享受することは困難というデータも出ています。

それに対して、売り手企業はシナジー効果の31%は平均的に受け取ることができているというデータもあります。このデータからも買い手側が慎重に検討する必要があると言えるでしょう。

さらに運輸や公益事業、通信業などは一般的には独占的なシナジー効果が期待できそうですが、規制当局からの制約で期待ほどのシナジー効果はできないという専門家もいますし、海外企業を買収する際にもその国特有のカントリーリスクも熟慮する必要があります。

5.まとめ

以上のように、M&Aには、買い手側企業や売り手側企業に事業拡大、企業価値の向上、コスト削減などの観点で様々なメリットやシナジー効果をもたらしていきます。が一方でM%A独特の難しさも存在します。

企業のM&Aは、企業間のみならず、取引先、仕入先などの商流圏や顧客、株主なども大きな影響を受けることから、シナジー効果をよく算出し行う必要があります。

また業種や取引する国によっても、様々なリスクが存在します。M&Aでの成功は、こうしたリスクを踏まえつつ、お互いの経営資源や強みや弱みを明確化しながらいかにスピーディに実行していけるかが問われてきます。