徹底検証!M&Aと企業に関係する3つのキーワードから見えるものは?

現在の変化の激しいビジネスシーンでは企業にとってM&Aと言う手段が重要な戦略のうちの一つになりつつあります。今回はM&Aと企業に関係する3つのキーワード「実態」「海外M&A事情」「企業評価」に分けて説明します。

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1.M&A経験企業における実態

2013年のデロイトトーマツコンサルティングの調査によれば、M&Aを実施した企業の成功率は36%と言うデータが出ており、ここでいう成功の定義は企業が設定したM&Aの目標の8割を達成した企業を成功と定義しています。

またM&Aを企業の事業戦略、経営の実行手段として活用する企業は67%となっていて、多くの企業がM&Aを有効な戦略的手段として認識していることがわかります。

一方で、M&A戦略の具体化という点では、効果、売上、利益の試算、投資枠の予算化まで実施できている企業は約20%にとどまっているというデータが出ています。

中期経営計画に施策として明示している企業は60%というデータから、成長戦略の具現化までには至っていない実態があると言えるでしょう。

M&Aで成果を上げているグローバル企業は、戦略に合致した買収先企業のリストアップ化や仮説検証、積極的に相手企業に買収提案をおこなっていることを考えれば、この現状はやや格差があると言えます。

さらにM&Aを企業戦略として、実行するうえでの課題は、「M&A実行体制」と「ノウハウの欠如」が最も多い回答でした。

次に多いのが、「適切な買収先候補の選定」を挙げる企業が多いことから、実行体制の強化とノウハウや買収先の情報集ができず、M&Aの実行に踏み切れていない企業が多い現状にあるということが言えます。

そして、約20%の企業が仕組みづくりの初期段階の投資枠の設定や専門組織の保有に取り組んでいないことからM&A成功への仕組みづくりもまだ不十分と言うデータもありました。

M&Aを企業の経営戦略に考えていながら、多くの企業が具体的なアクションまで至っていない現状が浮き彫りとなっています。

中小企業にとっては、M&Aは急速に認知されてきてはいますが、実際に会社を譲渡する経営者はまだまだ多くないと言う見方もあり、その原因に、会社の譲渡自体が「負け組」などの負のイメージがまだ強いことが挙げられます。

高齢化してきている経営者の中にはM&Aは最後の手段で、「最後まで経営者を全うしたい」と言う本音もあり、売却側と買収側とでは、事情に大きな差があるのも実態です。

売却側は企業価値を過去の通信簿としてなるべく高く評価されたいという事情に対して、買収側は、どのくらい将来的に収益を生むのか?シナジー効果はどの程度かという未来へ対しての期待値があります。

この双方の事情に差があるのもM&Aを検討する企業の実態といえるでしょう。

2.日本企業の海外M&A事情は?

M&Aを検討している中小企業はまだまだ具体的な動きを起こしていない中で最近、日本市場が縮小している中、資金力のある大企業を中心に海外に販路を求めてM&Aをする企業は増えている傾向にあります。

あるM&Aコンサル会社によれば、2015年の日本企業が海外企業に対して行ったM&Aは前年比0.5%UPの560件、取引額では92%UPの約11兆2,000億円と過去最高額を更新しました。

さらに2016年度は635件で取引額は前年比7.2%ダウンながら、10兆4,011億円と2年連続の10兆円越えとなりました。

大企業を中心としたM&A推進の要因の一つが企業の豊富な利益剰余金です。2015年末の日本企業の利益剰余金は、355兆7,600億円と過去最高額になりました。縮小する国内市場から成長する海外市場へのシフトをしてM&Aに投資し、事業の成長を加速させる狙いがあるとみられています。

もう一つの理由に大企業を中心に、経済の伸びが大きい米国や新興国の企業M&Aは短期間での事業拡大に有効な戦略であるという見方があるからです。

国際通貨基金(IMF)によれば、2015年度の日本の成長率は0.6%と米国3.6%、新興国4.3%, ユーロ圏1.2%も下回ります。

企業の成長の源泉は海外に見出すしかないというのが日本企業の経営陣の見方のようです。また政府の企業統治改革を理由にあげる専門家もいます。

株主と企業の対話を促すシュチュワードシップ・コード導入により、機関投資家が投資先の経営に注文するようになり、設備投資やM&Aに資金を投じるように希望していることが大きいと言われています。

ここ数年の日本企業のM&Aは東南アジア諸国を対象としたM&Aの動きが活発化し、特に金融機関のM&Aが目立っている現状です。

2007年には三井住友銀行がベトナムのエグジムバンクに出資した他、みずほ銀行もベトコンバンク、三菱東京UFJ銀行はベイトンバンクへと出資しました。また三井住友銀行はインドネシアや、カンボジア、香港の銀行へも出資しています。

また中堅企業や、法務分野でもタイ、マレーシアなどへの進出も見られ、さらに海外企業が日本企業の買収も見られています。

最近で代表的な案件は、台湾のホンハイグループによるシャープ買収や、中国のテンセントグループによるソフトバンク保有のフィンランドモバイルゲーム開発会社の買収などです。

さらに直近の2016年は、成長国だけではなく、先進国の技術を取り入れようと日本企業による先進国企業のM&Aも目立ってきています。

代表的なのはソフトバンクの英半導体アーム・ホールディングスの買収や日本電産による米国電気大手エマソン・エレクトリックの買収です。

ブランド力や技術力が世界的に通用することからメリットが大きいとの判断で今後も大型案件は増加していくといえるでしょう。

一方で課題も指摘されており、買収後の海外企業を傘下に入れたはよいが、日本流の人事やマネジメントでは全く有用しなかったという声もあります。

例えば、欧米企業を買収しても実力主義の欧米社会では日本の経営陣を送っても、現地企業の従業員は全く聞く耳を持たない、資本は出してもらっているが技術は完全にこちらの方が上だと言う態度も見られるようです。

さらに日本流のマネジメントでは、東南アジアなどの新興国では日本流を押し付けると規律が厳しすぎて上手くいかないと言う例もあります。その背景には日本の経営人材が欧米ほど専門家されて育っていないと言う課題もあるようです。

3.M&Aにおける企業評価とは?

M&Aにおいて、企業評価は重要な項目の一つですが、概ね、買収価格の交渉基準になる株価を算定することを指します。売却する企業の売却価格の目安を図る上で有効ですが、専門家によっては、企業評価に絶対的な方法はないという見方もあります。

例えば、企業を相続するときの企業評価と、M&Aで第三者へ会社を譲渡する場合では評価に対する考え方が全く違ってくるからです。相続税が発生する場合は、国税庁が定めている「財産評価基本通達」という評価方法が適用されます。

また事業の特性や成長ステージ、その他企業の取り巻く環境から総合的判断をしていき、具体的には企業評価は収益性、財政状態、成長性、業界特性、経営計画などから算定していきます。

3−1.企業評価方法の種類

企業評価方法はおおまかに分けて以下の3つです。

①時価純資産価額法

一般的に中小企業の価値を表すのに多く用いられている評価法です。時価の純資産額に加えて営業権を算定し、その合計値が企業評価額になります。

この算出方法は、企業の財政状態や収益性の両方を反映させた企業評価が可能となり、具体的には、企業が保有している資産の時価から負債を控除した額が企業価値ということになります。

単純で客観的な評価方法ですが、注意点が中小企業の多くが税法基準で会計をしていたり、不良資産をそのまま資産として計上していたりするので、資産、負債の項目が企業価値の時価を表していないケースもあるようです。

M&Aでは、よく時価で全ての資産や負債を再評価することが多くあります。資産、負債を時価評価しなおす項目は以下です。

  • 受取手形
  • 売掛金、貸付金
  • 棚卸資産
  • 固定資産
  • 投資有価証券、子会社株式
  • ゴルフ会員権
  • 買掛金、未払金
  • 未支払法人税等
  • 引当金(賞与引当金、退職給付引当金)
  • 偶発債務

などです。ただしここに「のれん」は含まれていません。M&Aにおいてはのれん代は重要ポイントですので、時価純資産価額法はグループ内で株主変更の際や現物出資ををする際には優れている方法といえるでしょう。

②ディスカウント・キャッシュフロー法(DCF法)

会社の収益またはキャッシュフローに着目する方法です。DCF法は以下の項目で行われます。

事業計画を作成

将来の予想収益を基に評価するため、評価対象会社の約5年分程度の事業計画が必要となることが一般的です。

DCF法ではこの事業計画の精度や信憑性が株式価値に大きな評価を与えます。また事業の市場動向や競合他社との競争に対して実現可能なのか?必要な設備投資は盛り込まれているかといった観点から事業計画の信憑性を図ります。

割引率を決定

企業の事業計画が期間以降も継続すると考え、各年度のキャッシュフローを割引率で割って計算する手法です。

例えば、毎年1億円づつのキャッシュフローを生み出す会社の割引き率が10%の場合は、企業価値が10億円となりますが、割引率が5%の場合は5億円の企業価値となり、

割引率は自己資本コストと負債コストの加重平均により計算をします。

余剰資産をプラスし、有利子負債をマイナスして株式価値を算定する。

DCF法は本業のみの事業価値を算定する方法ですが、事業価値と企業価値では意味が異なります。事業価値は事業そのものの価値です。企業が持つ余剰資産は含みません。さらに有利子負債の価値を控除していません。

企業全体の価値=(事情価値+余剰資産)–有利子負債となります。

すなわちDCF法で算出された事業価値–正味の負債=企業全体価値となります。

③類似業種比準法

市場価値(相場)に着目する方法で、公開している類似会社の株価と当該会社のある財務数値との倍率を算定して、評価対象会社の財務数値に倍率を乗じて算出する方法です。

株価や配当金の額、利益額、純資産の帳簿上の額などの項目で国税庁の発表している「類似業種比準価格計算上の業種目及び業種目別株価等」を参照しながら算出することができます。

株式公開を目指している企業や上場をしている比較的しやすい同業がいる企業を評価する際によく使われます。自社の事業内容や規模が似ている企業を選択することがポイントです。

3−2.M&Aにおける企業評価と売買価額

既に第1章の最後で少し述べましたが、企業のM&Aにおける売り手と買い手の事情は異なります。

日本のM&Aの大多数を占める中小企業が売り手の例をとると、創業者経営者が1代で事業を起こして20年、30年と経営されてきた方が多いですが、その過程には、様々な紆余曲折があって経営されてきた方が多いと思います。

順風満帆でずっと苦労もなく、業績は右肩あがりという経営はいないでしょう。倒産の危機や幹部社員の退職、自然災害や景気の減退など常に苦労とともに経営してきた経営者がほとんどです。

そんな売り手企業からすれば、その過去の苦労の分も企業評価に入れて売買希望価額として提示するのが一般的だと言われています。これを心理的企業価値と呼んでいる人もいます。

すなわち中小企業の企業価額=経済的価値+心理的価値となっているのです。

一方で買い手側は、その心理的価値の大きさはあまり理解できず、

買収価額=経済的価値となるのが一般的です。

ここに双方のギャップが生じます。売り手側の経済的価値が、買い手にとって不可欠で一刻も早く買収したいという必要性があれば、売り手の企業価額もある程度は考慮されるでしょう。

しかし、売り手が心理的価値が高く、企業価額を算定している場合は、買い手にとっては高額で応じられないケースもあります。

もしM&Aの交渉をスムーズにいかせたい場合は、双方がお互い立場をよく理解し、第三者を立てて客観的に進める必要があると言えるでしょう。

4.まとめ

日本の企業のおけるM&Aは国内の市場縮小などの理由から海外企業を買収または、事業の一部を譲渡する傾向が活発化されており、取引件数も年々増加傾向にあると言えますが、企業文化などの摩擦も現状として指摘されています。

その一方でまだまだM&Aを戦略として考えてはいるけど、ノウハウや相手企業の選定の情報不足やM&Aを実行する組織づくりなどに着手できていない企業も多くある実態もあります。

今後は日本企業にもグローバル経営に対応できる経営者育成などの課題克服が求められているといえるでしょう。

また企業の評価方法もケースバイケースで専門家を交えた算定と双方理解ある交渉が必要と言えます。売り手買い手の双方の事情もお互いによく理解する必要があります。