弁護士には「弁護士法第23条の2」という物凄い武器があります。
弁護士は、依頼者や相手方の戸籍謄本や住民法が取れるだけではなく、弁護士会を通して官公庁や企業などの団体に対し必要事項を照会できる、という法律上の制度があるのです。意外に知らない人は多いのではないでしょうか。
今回は、弁護士法23条の2について、23条照会について説明します。知っておいて、損はありませんよ。
まず、弁護士法23条にはどんなことが書かれているのでしょう?
1.弁護士法23条とは
第23条 弁護士又は弁護士であった者は、その職務上知り得た秘密を保持する権利を有し、義務を負う。但し、法律に別段の定めがある場合には、この限りではない。
(報告の請求)
第23条の2 弁護士は、受任している事件について、所属弁護士会に対し、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることを申し出ることができる。
申し出があった場合において、当該弁護士会は、その申出が適当でないと認めるときは、これを拒絶することができる。
弁護士会は、前項の規定による申出に基き、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。 簡単にいうと、弁護士は、弁護士会を通して官公庁や企業などの団体に対し、必要事項を照会できるのです。
2.具体的な照会例
具体的にはどんなことを照会できるか、大まかな例を挙げるとすると
・ある旅館に対して、○年○月○日(曜日)に○山○子氏は宿泊していましたか?
・ある銀行に対して、○○銀行△支店に ××氏の口座はありますか。
そしてその取引履歴知ることもできてしまいます。
・NTTドコモ、au、ソフトバンクに携帯電話番号の契約者・使用者の住所・氏名を教えてください。
※方法は後で説明していますが、弁護士が弁護士会発行の所定用紙に手数料を添えて、弁護士会の弁護士会23条照会というところに照会しないといけませんよ!
3.なぜそのような制度があるのか?
弁護士が、依頼者の委任を受けて、問題を解決しようとするとき、事実を立証するための資料を集めることは不可欠になります。資料などは必ず、依頼者が持っているとは限りません。弁護士側も集める必要があります。
よって資料を持っていると考えられる官公庁や企業などの団体に対して、必要事項を照会することが必要になります。
4.照会方法(手続き)
弁護士でないと照会できませんので、弁護士が行います。
- 弁護士は、全員事務所のある地域の弁護士会に所属しています。
弁護士は依頼を受けた事件について、弁護士会に対して「照会申出書」を提出します。
- 照会申出に対して、形式面(申請書の内容の不備等)、実質面(必要性・相当性)について、弁護士会で厳格な審査が行われます。
- 弁護士会の審査の結果、可とされたもののみ、弁護士会会長名で官公庁や企業、事業所などに対して照会を行います。
逆に弁護士会から回答依頼がきたときはどうすればよいのでしょうか。こちらも私たち個人はあまり関係ありませんが、原則として、回答する義務がありますが、拒否をした例もあります。ただ、弁護士会の中でも、下に書いているような動きがあります。
・照会審査担当者連絡協議会の開催
弁護士会照会の審査が適正になされるように、毎年弁護士会の審査を担当する弁護士か集まり、情報を集約するとともに審査の問題点などについて意見交換を行っています。
・紹介先となる官公庁、企業事業所どの間の協議会の開催
紹介先となる官公庁、団体との間で協議会を開催し、本制度について意見交換を行っています。
・研修など
弁護士照会制度の適正かつ有効な活用のため、弁護士会員向けにライブ研修を実施しています。
・改正運動
弁護士照会に対しては、回答すべき法律義務があることが裁判例および政府解釈によって示されていますが、拒否、協力していただけないこともあります。そのためより充実した制度となるように同条の改正案を公表するなどして、改正運動もしています。
5.問題点など
今のところは、弁護士に依頼し、証拠集めをする方法の一つになっています。ですので、あくまでも文書で報告を求めるだけのものであって、照会です。警察のような調査はできません。また、官公庁、団体の拒否例もあります。
ここで、個人情報との関連性はどうなっているのか?と思う人が出てくるかもしれないので、念のため説明をしておくと…
6.個人情報保護法との関連性
弁護士法の規定は、弁護士個人ではなく、弁護士会からの照会についてのものです。
弁護士法第23条の2に基づく弁護士会からの照会に対する回答は、法第23条第1項第1号に規定する「法令に基づく場合」に該当するため、照会に応じて提供する際に本人の同意を得る必要はありません。
なお、弁護士法第23条の2に基づく弁護士会からの照会は、強制力を伴わないものの、一般に回答する義務があると解されており、同照会制度の目的に即した必要性と合理性が認められる限り、一般に回答をすべきであると考えられます。
つまり、かなり物凄い武器だということです。
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