必見!企業買収の定義と詳細なプロセスを解説します

昨今の企業買収などのM&Aの情勢を見ると、どんな会社に勤めていようと今後、企業買収に関わる、または影響を受ける可能性はあると言えます。企業買収の知識はもっていて損はありません。

今回は企業買収についての定義とそのプロセス、買収の形態についてみていきます。

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1.企業買収とは?その定義

買収とはM&A用語に限定すると、企業が他の企業を支配する目的で議決権の過半数を買い取ったり、事業部門を買い取ったりすることをいいます。

M&Aは合併と買収という意味ですが、広義の概念では一部株式譲渡、事業譲渡、資本提携等を含めた企業間の提携まで含まれます。

一般的に企業買収というと、買い手企業が売り手企業の株式を取得して一定割合以上保有して売り手企業の支配権を獲得することを指します。

通常は議決権の株式の半分以上を取得すると、普通決議の賛否が自由に決められ、(役員の選出なども含む)さらに3分の2以上を取得すると、特別決議の賛否も含めて支配権を獲得できます。

新規で自社で事業を0から立ち上げるよりも、すでに実績のある企業を買い取った方が時間の節約になると言う理由で行う企業も多いです。

世界でのM&A取引額は、2015年で4兆6000億ドルを超えて、過去最高額を記録し、日本企業が当事者となる件数は2428件、15兆7761億円で、4年連続の増加をしています。

企業買収は経営戦略の有効な手段として、すでに優れた技術や製品を持つ企業を取り込むことにより企業の事業価値向上や市場でのシェア拡大、販路拡大やコスト削減などの大きなメリットをもたらすことが可能です。

また売り手企業にとっても、後継者問題の解決や先行きが不安な経営の改善などのメリットが存在します。

1−1.企業買収のプロセス

一般的な企業買収のプロセスは以下です。

①目的の明確化

意外と何のために買収を行うのか?というところが明確になっていない企業が多い様です。目的によっては、企業買収ではなくても良い場合があります。

漠然と、市場シェアの拡大や収益アップだけの目的だとリスクが高まる可能性もあります。

②買収先のピックアップ、選定

目的が明確になったら、次の作業は買収先の選定です。選定手順の例としては、対象業種、エリア、規模、買収予定額などから候補の会社リストを作成していきます。

その中からさらに絞り込んでいき、自社独自の情報網や、M&A専門仲介業者、金融機関、証券会社などから情報を仕入れるのも有効です。近年のM&Aは専門仲介業者が入るケースが多い様です。

③買収先の情報収集

買収先の財務状況、事業内容などを情報収集します。これらの必要情報も専門仲介業者から直接仕入れることができます。また上場会社であれば有価証券報告書、HP情報、調査会社などからも仕入れることができます。

この時点でスキーム策定といって、財務、法務、税務、事業内容を考慮して最適な方法を模索し、買収金額や投資効果額などもよく検討します。

④買収先とのコンタクト、条件交渉、検討

直接対象企業との面談を実施して、事前調査で不足している情報や現場からの声を聞き、好感触を得たら、徐々に具体的な条件面のすり合わせをしていきます。

成功している企業の中には、経営者同士で懇談会を頻繁に行い、胸元をお互いに開いてビジョンの意気投合をしたなど、フィーリングも大切にしている人も多い様です。

また仲介業者も活用すると、第3者の観点で助言をもらえて、スムーズに交渉が進むことも多い様です。中には直接話しづらい条件面などの内容も事前に打診してもらうなど要所で効果的です。

⑤基本合意書取りかわし

ここまで条件面で合意した内容を文書にまとめて基本合意書に記載していきます。双方確認後捺印を押して取りかわし完了となります。この時点では正式契約ではなく、法的拘束力はもたない旨を明記する場合が多い様です。

⑥デューデリジェンス実施

詳細調査を行い、基本合意書と相違はないか?入手情報との乖離はないか?隠れた買収リスクの有無などを調べていきます。中小企業のデューデリジェンスでは法務、会計、事業などの分野から調査していきます。期間は規模によって異なりますが、長くても1週間程度です。

⑦最終契約書の締結、譲受実行、運営開始

デューデリジェンス後、調査事実を踏まえて、再度基本合意書の検討、最終条件確定を行います。そして譲渡契約書などの正式契約の締結、引き継ぎ作業などの譲受実行、運営開始をします。

1−2.企業買収におけるアドバイザーと仲介業者

①アドバイザーの役割

企業買収は上記の手順で進みますが、実際には簡単にいかないケースが多いので、専門家の力を借りないとスムーズにいかない場合があります。特に対象先の選定や、法務、財務、会計分野は弁護士、税理士、会計士が必要です。

さらに、条件交渉や全体のスケジュールを進める管理、契約書や事業内容の分析や資料作成、企業価値評価など交渉を進める上での作業は多岐にわたります。

これらの作業は大企業のM&Aに精通している専門部署の担当者なら可能ですが、中小企業の経営者や担当者には難しい作業です。M&Aアドバイザーやファイナンシャルアドバイザーなどのアドバイザーはこれらの作業を代行してくれ、買収案件の成立をサポートしてくれます。

②仲介業者

仲介業者は、文字通り買い手と売り手の交渉の仲介を行います。大企業や、欧米企業などの大規模な買収案件だと、交渉自体がポイントとなり、難航する場合があります。

特に大規模買収案件は買い手と売り手の利益関係が極めて重要であり、双方ともに専門家を立てて助言を受けることが一般的です。

中小企業の場合では、双方の利益も重要ですが、オーナーである経営者の希望が強い傾向にあり、売り手や、買い手双方の意見をまとめて調整するといった役割が強くなります。

このように企業買収においてはアドバイザーや仲介業者をうまく活用することが成功の鍵であると言えます。

2.持株比率と議決権とは?

上記にてすでに少し述べましたが、ここではさらに持株比率と議決権について説明していきます。

企業を買収するには、持株比率が非常に大きな意味を持ちます。株式会社を買収する上で、この株式の持分によって会社の経営に関与できる権利の内容が決まってくるのです。

一般的な株式会社を買収する上での議決権と比率は以下です。

  1. 1株以上:各種書類の閲覧権利
  2. 総株主の議決権3%以上:会計帳簿の閲覧権利
  3. 総株主の議決権3分の1以上:特別決議の阻止
  4. 総株主の議決権半分以上:経営権の取得、役員派遣
  5. 総株主の議決権3分の2以上:特別決議の成立権利

中小企業の例で言うと、後継者問題で企業譲渡を希望している経営者の場合は株式の100%譲渡を希望する経営者がほとんどです。中小企業の場合は事業規模が大きくないため、複数の株主で構成すると重要な決議の際に支障があるケースがあるからです。

また個人で所有している場合は何らかの事情で亡くなった際に親族へ所有権がうつるケースもありますので、事実上深い関与がある法人株主が所有するケースを除いて中小企業は100%譲渡が望ましいと言えるでしょう。

また事業のシナジー効果を狙った場合や、税務上の対策で連結対象にしたくない場合は、持株比率を50%以下にする場合もあります。

過半数を取得すると帰って経営上マイナス効果になるケースがあるからです。このように企業を買収する場合は持株比率を十分目的に合わせて検討することが重要です。

3.企業買収の形態

3−1.株式取得と事業譲渡

企業のM&Aにおいて、買収という形態では株式取得か事業譲渡という形態が一般的です。

ここでは両者の特徴と違いについて見ていきます。

①株式取得

この形態は企業のオーナーが交代するという意味合いが強いものです。オーナーの個人の力量や人脈で事業が運営されていることが多い、中小企業の事業継承には向いていると言われています。

その理由は手続きが比較的しやすいという理由があります。例えば、株式取得以外の方法だと、買収後非買収企業が取引口座を買収企業に変更しなければいけません。新規口座開設の手続きがスムーズにいかない場合もありますし、与信上の問題も出てきます。

②事業譲渡

この形態は、法人としては買収は不要ですが、ある事業だけ取得したいと言うケースに向いています。売り手の会社自体は債務超過や負債過多ですが、事業価値自体は高いという場合に事業のみ買収するという形態です。その中には資産と営業権が含まれます。

よく企業、事業再生の現場などで用いられる手法です。

3−2.株式譲渡の手順

ここでは、既に述べた株式譲渡の手順について見ていきます。

  1. 買い手企業との売却価格、売却株数の決定、合意
  2. 株主が売り手企業に対して株式譲渡承認を請求
  3. 売り手企業による取締役会または株主総会の開催、株式譲渡承認請求に対して譲渡を承認する。
  4. 買い手企業による取締役会または株主総会を開催し、売り手企業の株式取得を承認する。
  5. 売り手株主と買い手企業による株式譲渡契約書の締結と支払い

以上が一般的な流れとなります。

中小企業の場合は⑤の支払いが現金で行われるケースが大半ですが現金を使用しない場合もあります。株式交換といわれる手法ですが、この制度は100%子会社を作るための手法で、売り手企業100%の株式と買い手企業の一部の株式を交換する形で行われます。

この制度だと、売り手側の株主は買い手企業の株主となります。さらに株式交換後に株式を売却して現金にすることもできる他、結果的に買い手側の株主になるため、間接的には売り手の株主にとどまるという意味があります。

3−3.企業買収は結婚と似ている?

企業の買収は結婚と似ているところがあり、手順も婚活手順とよく似ています。

対象企業に求める条件を明確にし、当該条件を満たした対象企業を見つけることが重要です。

これは婚活であれば、女性が相手に「年収800万円以上」や「身長180センチ」あるいは「外で働きたいので家事を分担してくれる人」などの条件を選定する、というように企業もそれと同じで、これだけは譲れないという条件を持つことが重要です。

またそもそもの結婚の目的をよく考えない人が多いのと同様に企業買収もなんとなく事業拡大と言う理由で取り組む経営者もいるようです。

結婚の目的が子どもがたくさん欲しいことや、安定や安らぎが欲しい、親の面倒を一緒に見て欲しいなど人によって要望が違います。また婚活パーティなどで、相手とのコミュニケーション段階で不具合がおこれば、結婚まで成立は困難でしょう。

特に買い手は、相手の企業を傘下にいれる、いわば嫁に来てもらうことと同じと考えれば実務面だけではなく、相手企業の気持ちを安心させ、幸せにするという決意と責任が必要だと言えます。

ご縁を頂いた相手を生涯大切にするといった基本的姿勢が一番重要といえるかもしれません。

また企業買収は相手の企業だけではなく、従業員や取引先も巻き込む行為で、結婚の家族親族も深く関与していることと似ています。

それぞれ関係者には人生というものがあります。その観点からすれば、企業買収は利己的では成立できない非常に大きな責任が存在します。

4.まとめ

以上の様に、企業買収は複雑かつ専門的な手続きが存在します。特に株式譲渡の場合は、取得比率によって買収相手の企業の経営権に大きな影響があります。

企業買収成功のためには、上述した各プロセスごとに専門家のアドバイスや情報をもとに精査する必要があります。

今後も後継者問題や経営安定化の問題を抱える中小企業を中心に需要は増えてくることから、日頃の情報収集はもちろん先ず、自社が相手がぜひ傘下に入りたいと思うような魅力的な企業になることが最重要と言えるでしょう。

また海外進出のためのM&Aも今後増えてくると予想されますので、日本だけではなく、海外の事情、リスクに柔軟に対応していくことも求められます。結婚相手を大切にする様に、企業買収も相手の事情や状況をよく理解することが重要と言えます。