事業売却を考えている経営者が必ず知っておきたい7つの情報

事業売却には様々な形態、メリットやデメリットが存在します。今、中小企業を中心に事業売却を考えているが、実際はうまく進んでいないというケースもあるようです。

今回は事業売却を考えている経営者のために知っておきたい情報をまとめました。

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1.「事業売却」の基本情報

1−1.事業売却の意味

事業売却には以下の意味があります。

  1. 会社の株式や事業を売却して譲渡することを指します。会社の支配権を継承する意味があります。
  2. 代表者やその他の役員を変更して経営を第三者に継承することを指します。

 

一般的には上記2つを組み合わせて行われますが、事業の一部を売却、譲渡するといったケースもあります。これは事業の選択と集中の理由からですが、競争が激しい事業を手放し、優先度の高いコア事業に経営資源を集中させ、経営資源を強化する目的で行います。

また売却の対象となるものは、事業を行う上で必要な商品、工場などのモノ、ヒト、権利などから定めたものを売却します。

特に中小企業の創業者オーナーにとっては、0から築き上げてきた会社を売却することは子供を手放すような行為であり、高齢や病気によりやむ得なく売却という理由や、後継者の不在、経営状況の悪化で責任を取るためなどの比較的消極的な理由が多いのが実情です。

特に最近は日本の高齢化、人口減少問題にともない、市場の縮小化で経営が困難になり、海外市場に強い販路を持つ企業の傘下にはいるという例も増えてきています。

しかし一方で最近は、早期リタイヤメントで家族と海外移住をして第二の人生を楽しみたいという理由や、別事業に挑戦するために高値で売却したいという積極的な事業売却も見られます。

1−2.事業売却の相手方

事業売却先は大きく分けて以下の5つに分かれます。

①同業者

同業者は、自社事業の理解度も高く、スムーズに売却が進むケースが多いと言えます。また売却後に、双方の売上が合算されることになり、業界内での市場シェアや影響力も増すというメリットがあります。

また製造業などであれば、重複する設備、人材面でコストカットも期待できますが、人材のリストラを断行する必要が出てくるケースもあります。

また同業者は競合相手でもあるので、売却の際には情報の漏洩に十分に注意をしなければいけません。

②異業種事業者

資本力のある企業が、新規事業進出のために異業種事業を買収するケースがあり、シナジー効果がでるかどうかはケースバイケースなので、十分に事前検証が必要でしょう。

売却側からすれば、自社の要望が十分に理解されているかを交渉段階で慎重に吟味する必要があります。また異業種でも近い業界による売却の方がシナジー効果が高い場合もあります。

③取引先

取引先も異業種に入りますが、自社との関係があるので、利害関係が割と一致しやすいケースもあります。自社のバリューチェーンの一環に入っていることから、取引年数が長ければ長いほど信頼関係や社員同士の交流もあり内密に交渉を進めやすいと言えます。

④ファンド

ファンドは、金融機関や企業から投資金を集めて運用利益を出す組織です。

現在では、優良な国内ファンドも多く、売却した企業を発展させるノウハウも有しているファンドも多いことから、売却先の有力候補の一つです。

ファンドは投資期間が決められているので、数年後には再度売却されることになります。

⑤経営陣

取締役などの経営陣が事業継承者になる場合は、壁になるのが、株式譲受け資金の調達です。経営陣が個人で調達できる資金には限度額があります。レバレッジバイアウトと呼ばれる方法で金融機関から資金を調達することになります。

このような手法はマネージメントバイアウトと呼ばれる買収方法で、多くの場合は上記のファンドからサポートを得て行います。

1−3.事業売却のメリット

ここでは主に3つの観点から事業売却するメリットを説明していきます。

①事業継承問題の解決

中小企業の65%が後継者不在で悩んでいるというデータもあります。後継者が見つからず会社を清算、廃業となれば、今まで築き上げたノウハウ、技術、商圏が無くなってしまうと共に、従業員やその家族、取引先にも深刻な影響をもたらします。

事業売却により上記の問題がスムーズに解決することが可能です。

②企業の存続、発展と社員のキャリアやスキルUP

企業の事業をより経営資源の豊富な企業に売却することにより、販路拡大、資金調達が可能となり企業の成長につなげることが可能です。

また資本の大きい企業は社員教育にも力をいれている企業も多く、現場や研修などで社員のキャリアにとっても好影響を及ぼすでしょう。

さらに雇用確保という観点からも、資本力の大きい企業の傘下へ入れば経営不振で業績悪化から雇用解雇という事態を回避して従業員の雇用を守るというメリットもあります。

③創業者利潤の確保

創業者である企業のオーナーが事業売却することによって利潤の確保が可能ですが、利潤を確保する方法としては以下があります。

・会社の売却

資産評価で有利に働く場合があり、分離課税で税率も抑えられるのでオーナーにとって有利です。

・株式公開

成長の圧力や内部管理体制の強化の必要性など、実現のハードルが高く中小企業にとっては現実的ではないといえます。国内でも年間数十社のみと言われています。

・廃業、清算

資産の処分価格が低くなるリスクとともに、株主への配当が総合課税となり税負担が大きい手段です。

 

以上の内容から、創業者利潤を確保するには会社の売却という手段が有効な手段であると言えます。

さらにオーナーが会社の借入金に対して個人保証、担保提供している場合は事業売却後解除が可能です。これは社長のポジションを譲っただけでは困難ですが、事業売却により解除することができ、精神的負担も軽くなるでしょう。

参考までにですが、事業譲渡となった場合は、会社の事業の一部を譲渡するという意味で株式譲渡とは意味が異なってきます。売り手は譲渡したい資産、事業のみを切り離すことができます。

一部の事業のみ譲渡なので、買い手企業にとっては偶発債務、簿外債務の引き継ぎはないというメリットや営業権や引き継ぎ資産が償却できるので節税効果があります。

またデューデリジェンスの工数が少なく済み、コスト、時間を抑えやすいという点もありますので、大企業以外はメリットが大きいと言われています。株式譲渡の次に中小企業のM&Aでは利用されている手法です。

1−4.事業売却のデメリット

事業売却にはリスクやデメリットも存在します。

  1. 会社の負債がある場合に取り扱いの検討が必要な場合がある。
  2. 株式譲渡の場合は、株主総会の特別決議が必要。
  3. 売却益に税金が課されること。

 

その他に特に中小企業で株主に創業者の親族がいるケースで、理解が得られない場合や、個人保証引き継ぎが困難なケース、事業形態が維持できない。売却後の経営方針への反対から従業員の大量離職、取引先との断絶などのデメリットが発生する可能性もあります。

デメリットを防ぐためには、専門家に相談しながら、自社や株式状況の正確な現状把握や売却先企業の競争環境、事業戦略を分析して、最もシナジー効果を発揮出来る相手はどこにいるのかを探し当てることです。

また双方の経営者の交渉、ビジョンの一致、利害関係の一致が必須です。

1−5.仲介業者の活用のメリット

事業売却には複雑かつ専門的な観点からの交渉が必要です。仲介業者の中には、各業界のビジネス構造と最近情報を研究し、もっともシナジー効果が高い相手先企業をピンポイントでのマッチングを可能にしている業者も存在します。

以下の2点が仲介業者活用のメリットです。

①財務、法務、証券の専門家チームによる案件担当

事業売却の際のリスクを徹底的に洗い出して、安全、確実なスキーム作成をしてもらうことが可能です。もし事業状態が良好ではなくても、売却につなげられる例もあります。

②多くの株主取引先や関係者との調整が可能

株主が複数いる場合や多くの取引先との調整は経験やノウハウが必要です。その代行も依頼できます。

以上のように、経験豊富で実績のある仲介業者であれば、活用するメリットは大いにあるといえるでしょう。

但し、仲介業者によっては一般的相場より手数料が高かったり、最初の相談料や着手金を請求し、話が全然進まない、結局M&Aが成立せずに相談料や着手金は返金されなかった。というケースもあるのでデメリットが出る可能性もあります。

最初は、無料相談や、セミナー開催している業者もあるので、情報を集めてみることや、実際に仲介業者を使った企業に話を聞いてみるなどしてみると良いでしょう。

2.事業売却、継承のタイミング

日本における中小企業の割合は約9割を超えています。中小企業の事業売却のタイミングはどこなのかをデータから検証していきます。

後継者という観点でみれば、野村総合研究所による「中小企業の事業継承に関するアンケート」によると、後継者が事業を継承するのに適切な年齢は43.7歳というデータが出ています。

参考までに最近5年間の現役経営者の事業継承時の平均年齢は50.9歳となっています。

また事業継承の年代別割合では、60代が42.2%と約半数に達していることがわかります。

一方で、事業継承後の業績の推移データでは、後継者が若い時に事業継承した方が業績が良いというデータもあります。

さらに中小企業白書2014版によると、後継者は育成期間も必要であり、最低3年、約43%の企業が育成に5年から10年はかけていることがわかりました。

これらのデータから、もし後継者に事業継承を考えているのであれば、後継者の育成と確保という観点から、早めの準備をしておくことが望ましいと言えます。

2−1.事業継承の実態は?

日本の中小企業の企業継承の実態としては、スムーズに進んでいない現状にあるようです。

東京商工リサーチによる中小企業の経営者の平均年齢の推移は右肩上がりで2016年で61.2歳、後継者不足による事業の廃業、清算は2016年で過去最多の29,583件となっています。

このデータから言えることは、依然として事業継承が急務な課題であることが明らかながら、高齢化も進み、事業廃業、清算件数も伸びていますので、事業継承をスムーズにできている企業が少ないということが言えます。

早期の段階から事業売却も視野に入れた取り組みが急務といえます。

また経営者と業績というデータから見ると、経営者が若いほど業績が好調というデータもあります。赤字企業率が経営者が70代に近づけば近づくほど比率が高くなる傾向があり、高年齢ほど事業が難しくなる傾向も明らかになっています。

もちろん業界によっても実態が変わってきますが、日本の人口減少や高齢化が進み、市場が縮小する中で早期にビジネスモデルを海外市場にも適応させるなど対策を打たなければ厳しい現状が明らかになっています。

こういった中で、例えば、事業を海外に強い販路を持つ資本力のある企業に売却し、若くて有能な経営者に入ってもらうことをすれば、生き残りの手段としては非常に有効であるといえます。

2−2.事業売却、継承が進まない原因は?

ではなぜ、日本の中小企業は事業売却、継承が進んでいない現状なのでしょうか?

その原因を見ていきます。

①事業低迷の予測ができなかった。

市場の変化が激しい現代においては、急で予測困難な現象も多々あります。大丈夫だと思っていても気がついたら世の中の変化に飲まれてしまっていたというケースも少なくありません。

テクノロジーの急激な発展や世界情勢による市場の変化でいつ経営が困難になるかは誰にも予想ができないという理由からです。

②後継者確保が困難だった。

子供に継がせたいけど、「すでに上場企業に勤めている」「違う業種を希望している」「地元に帰りたくない」「娘しかいなくて、嫁に行っているので困難」という経営者は多いようです。

優秀な幹部に継いでもらうといっても、能力面の不足や株式譲渡や借入金の個人保証や担保の問題で難しいといったケースもあります。

③誰にも相談できなかった。

日々の業務に忙殺されて、考えてはいたけど実行に移せず、廃業になってしまったというケースです。

中小企業の場合は、経営者も現場にいることも多いので日々の業務で一杯一杯になり気がついたら誰にも相談できずに一人で抱え込んでいたというケースもあるようです。

以上の3つが主な理由としてあげられますが、実際には、市場の変化による業績悪化でも、積み上げてきた技術やノウハウ、人脈には高い価値があり、事業を売却することにより業績が回復するケースも多いのです。

先ずは悩んだら専門家に相談してみるというもの有効な手段の一つです。

2−3.事業売却、継承のポイントは?

①現状把握や関係者への配慮

事業売却や継承は戦略的に行うべきであり、株主や経営陣、金融機関、取引先ごとに関係を整理していくことが求められます。

また株式譲渡なのか?後継者に引き継ぐのかにも状況は変わってきますが、借入金の返済状況や連帯保証や抵当権を確認しておく必要があります。

特に中小企業は経営者の個人の力で事業を推進してきたケースが多いことから、財政面でも経営者個人に頼っている場合が多いので、個人資産が会社資産になっていたり、会社資産が個人名義になるなど混合している場合があります。

事業売却や、継承ではそれらをスムーズに整理して譲渡する必要があります。また株主においても承認が必要なことから、複数の株主がいる場合に反対しないように進める必要があります。

また売却前後の従業員や取引先にも十分にスムーズにいくようにケアをするなどの配慮が求められます。

②プロジェクトチームを組む

一般的には、事業売却は社内外のプロジェクトチームを編成して進めていくのが一般的です。内容は、財務担当、管理担当などの幹部クラスの人材をチームに入れていくことです。

非常に繊細かつ緻密さが求められるため、一般社員ではなく、幹部クラス数人編成が一般的です。

また外部専門家は顧問税理士や弁護士がいますが、事業売却に精通した各専門家を統括できる戦略コンサルティング会社の担当者と共にプロジェクトを進めていくのが有効といえます。

3.まとめ

以上のように、事業売却は、株式譲渡や後継者に譲渡などによって方法や形態が変わってきますが、中小企業の事業継承手段としては有効な手法の一つです。また実行するには、経営者の早めの準備や専門家などによるチーム編成が重要です。

現在は市場の変化が早く、また日本市場の縮小、高齢化問題から、特に中小企業の事業存続、発展のためには常に頭に入れながら情報収集しておきたい手段の一つであると言えます。

様々なメリットやリスクを踏まえながら、ベストな選択と決断をスピーディにしていくことが求められています。日本の大部分を占める中小企業が事業発展すれば、日本経済にも大きな好影響をもたらしていくでしょう。