サイト売買は企業のM&Aにおける事業譲渡に近い

サイト売買とは、簡単に解説すると、何らかの事情でサイトを売りたいという売り手と、すでに運用されているサイトを買って自社サイトとして運用したいという買い手の両者のニーズがマッチングしてサイトが譲渡されることを言います。

しかし、そう言われてもなかなかイメージができないかもしれません。

そこで今回は、サイト売買はM&Aにおいてはどのような位置付けなのか解説し、さらにサイト売買と事業譲渡に関連する法律についても紹介していきます。

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1.サイト売買と事業譲渡

企業がM&Aで会社を売買するように、サイトも売買することができます。サイト売買を企業のM&Aで例えると、例えばM&Aの場合は大きく分けて「買収」「合併」「分割」があります。

 

その中でサイト売買の位置付けは、買収の中の「事業譲渡」に近いと考えることができます。企業が社内で色々な事業を行っている中のウェブ事業部の部分を売買するケースや、ウェブ事業部の中の一部のサイトのみを売買するケースもあります。

前者のウェブ事業部ごとの売買になったときは、サイトを運営するスタッフやサイトのライター、場合によっては仕入先、取引先も譲渡の対象になります。中にはサイトそのものはもちろん、それよりもサイトを運営するノウハウなどの情報が欲しくて買収を検討する企業もあります。

ゼロベースで情報を集めてウェブ担当者を教育していくよりは、すでに運営されているサイトとそのノウハウを持っている優秀なスタッフまで手に入れることができるのは、大きなメリットになるのです。

企業のM&Aの目的は、

  • 新規事業への参入
  • ライバル企業の買収によるシェア拡大
  • 複数の事業によるシナジー効果(相乗効果)

などが挙げられますが、サイト売買も同様の目的で行われます。

米Googleが動画事業に参入するために「YouTube」を買収したりとか、楽天が旅行事業を拡大するためにを買収して事業を拡大し「楽天トラベル」として事業を始めたりと、大きな企業でサイト売買が行なわれている案件も過去にありました。

1-1.ユーザーから見たサイト売買の影響

M&Aやサイト売買は、企業の都合によって行われるものですが、実際にそのサイトを使っているユーザーはどんな影響を受けるのでしょうか?

サイト売買をする際に、サイトと一緒にドメインも譲渡され、運営会社が変わってもドメイン変更が行われない場合には、ユーザーから見て気付くような変化はありません。そのサイトをブックマークしているユーザーがいれば、今まで通りブックマークからサイトに訪れることができます。

米GoogleがYouTubeを買収した際に、ドメインもサイト名も変更されなかったので、ユーザーは今までと何ら変わりはありませんでした。

M&Aで他の企業を買収してそのまま会社名を変更せずに自社の子会社化した場合も、お客さんにとっては影響はほどんとありません。サイト売買もそれと同じなのです。

1-2.ドメインやサイト名を変更する場合もある

もちろん、ドメインやサイト名を変更して買収会社が運営を始めることもあります。

ドメイン名を引き継ぐメリットがない場合としては、

  • もともとサイトの運用期間が少ない
  • SEOの影響がない
  • サイト購入後に大きく変更する予定がある

などが挙げられます。

また、単純に自社サイトとして運営をしたい場合や、既存のサイトの一部として運営したい場合は新しいドメインでリスタートすることができます。

1-3.サイトの運営は柔軟にできる

サイト売買後にドメインを変更してもしなくても、いずれにせよ企業が購入サイトを柔軟に運営できるのことが特徴でしょう。在庫を持たないサイトはもちろん、ECサイトであってもデジタルコンテンツを扱っているサイトならば、サイト譲渡後もほとんど影響なく運営を開始することができます。

2.サイト売買と事業譲渡に関する法律

サイト売買では思わぬトラブルに巻き込まれてしまったり、サイト運営に支障をきたすリスクが隠れている場合があります。場合によっては訴訟沙汰になってしまう案件や、逆に何も太刀打ちできず泣き寝入りせざるをえない案件もあります。

このようなトラブルを避けるために、できる限りの対策は行っておきたいところですが、その一つが「契約書を作成すること」です。

契約書の作成については「サイト売買契約書の項目と6つのチェックポイント」こちらの記事で解説しているので今回は詳しく触れませんが、その中で事業譲渡に関する条項があるので紹介します。

2-1.協業禁止条項と事業譲渡

サイト売買でよくある相談の一つに、

「サイトを購入後、しばらくすると自分が購入したサイトと同じようなサイトが現れてライバルになっています。調べてみると、サイトを購入した相手が同じようなサイトを再び運営していました。これはどうすることもできないのでしょうか?」

と言った類のご相談です。

これは、サイトを購入した側にとっては大きなリスクになりうる事態なので、これを避けるために契約書に「協業禁止義務」を記載します。

協業禁止義務については「サイト売買で発生するトラブルの原因とトラブル回避のコツ」こちらの記事をご参照ください。

記載する条項の内容としては

甲は、直接または間接的に(関連会社を通じて行う場合も含む)譲渡基準日から2年間は、本件事業を営んではならない。

引用:STORIA「弁護士が教える、サイト売買に失敗しないために必ず知っておきたい4つの鉄則」

このような条項を契約書に記載しておけば、同業サイトの運営が発覚した際に損害賠償請求ができたり、運営の差し止めができます。

しかし、契約書に協業禁止条項を記載し忘れた場合や、そもそも契約書を作成しなかったというケースもあります。その場合はどうなるのかというと、ここで「事業譲渡」がでてきます。

サイト売買が会社法上の「事業譲渡」に該当するかで決まるのですが、事業譲渡に該当する場合は会社法第21条で協業禁止義務が定められてるので、損害賠償請求や差し止めが可能になります。

会社法上で「事業譲渡」に該当しなかった場合は売却側に協業禁止義務は発生しません。

今回のポイントは、まずは【事業譲渡に該当するか】。仮に事業譲渡に該当した場合でも、【新たに現れたサイトが「同一の事業」「協業」に該当するか】この2点がポイントになりそうです。

これらは簡単に認められるわけではないとのことですので、その点も理解しておくと良いでしょう。

まとめ

サイト売買と事業譲渡について簡単にまとめると、

  • サイト売買はM&Aの中で大きく分けたカテゴリのうち「合併」の中の事業譲渡に近い
  • サイト売買の目的は「新規事業の参入」「シェア拡大」「事業拡大によるシナジー効果」などがある
  • サイトは柔軟な運営が可能なため、サイト買収後にあらゆる運営方法に適用できる

などについて解説していきました。

また、該当するサイト売買が会社法上の「事業譲渡」に該当するかどうかで売却側に協業禁止義務が発生するかどうかが変わってくることなども知っておくべき項目です。

サイト売買はネットが多様化されてきた中で、かつてのように企業が大きなサイトを売買するだけではなく、中小企業や個人が小規模なサイトを売買する案件も増えてきています。

個人が小さなサイトを売買する場合は事業譲渡のような感覚はないかもしれませんが、事業譲渡の感覚を持つことは大切なのではないでしょうか。

その感覚を持つことで、売買契約書を作成してトラブル防止に努めるなど、両者にとってメリットがある売買が可能になるでしょう。