必読!企業買収の方法と数値だけでは見えない成功ポイントのまとめ

現代のビジネスにおいては企業買収、合併が日常的に行われています。企業の経営者は日本だけではなく、グローバル市場への対応が必要なことから企業買収への関心が高まっていると考えられます。今回は企業買収の方法と手順、成功のポイントをまとめてみました。

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1.企業を買収する方法

企業の買収方法は大きく分けて4つです。①買収、②合併、③分割 ④資本提携 ですが、どれも共通して言えることは、買収側は、ゼロから事業を立ち上げるよりも効率的で「時間を買う」ということがいえます。

以下詳細に説明していきます。

①買収

株式譲渡、事業譲渡、株式交換に分かれ、企業買収では多く用いられる方法です。特に株式譲渡は株式保有によって会社の経営権を支配する方法で、発行株式の3分の2を保有すれば株主総会の特別決議も決定でき、経営権を握ることが可能です。

通常中小企業の買収の場合は100%株式譲渡になります。また株式譲渡が現金でのやり取りに対して、株式交換は自社の株式を対価として支払うのが特徴です。買収する際に、現金がなくても他社を買収することができます。

事業譲渡は会社の全部または一部を買収する方法です。買収する資産、負債を明確にする必要があるといえますが、売掛金や在庫などの個々の資産や不動産賃貸契約、取引基本契約などの個々の契約は移し替えまたは再契約が必要です。

②合併

吸収合併、新設合併に分かれます。手続きが効率的でシナジー効果が高い方法で、吸収合併は合併する1社を存続会社として他社を解散し、解散会社に関する財産や権利義務全てを存続会社が継承する方法です。

新設合併は新しく会社を設立して合併する複数の会社の事業の1部または全部を引き継がせる方法です。また合併比率を協議する必要があります。

③分割

新設分割、吸収分割に分かれますが、会社分割の特徴は株式交換と同様に現金がなくても買収が可能なことや、買収側が上場企業、売却側が未上場の場合に、売却側の株主は所有株式の一部資金化が可能です。ちなみに会社法上では、分社型分割のみを会社分割と定めています。

買収資金を現金ではなく、新株発行に求めるため、合併に類似した買収手法といえるでしょう。

④資本提携

第三者割当増資の普通株式か種類株式などに分けられます。売却側が新しく株式を発行して、買収企業に引き受けてもらう方法です。この方法は株式譲渡と同様に株式を取得する方法ですが、ただし既存株主がいるため100%の完全買収はできない方法です。

また、売却企業のリスクを見極めるために一旦は第三者割当を受けて経営参加し、その後既存株主の株式を買収する2段階買収をする場合もあります。

企業買収方法活用のポイント

①から④のどの方法を活用するのかは、目的や事業規模、事業の特性や会計税務関連、万が一買収後に不調に陥った際のリスクなどを考慮して決定するのが良いでしょう。

企業買収は顧客、人材、ノウハウ、販売拠点などを買収し、ゼロから立ち上げるよりもはるかにスピードを持って事業を立ち上げ収益を見込めることが可能で、買収側と売却側の双方のシナジー効果によって、コスト削減も可能です。

一方で、リスクも多々存在し、明確な戦略がない企業買収は余計なリスクや資産を抱え込むことにもつながり、文化の違いから企業間の軋轢を生むケースもあります。

尚、企業を買収するにあたっての注意点は秘密保持の厳守、相手の経営に対する思いを尊重すること、企業環境は日々変化していることを理解することです。

2.企業買収手順

仲介業者を活用した場合の企業の買収手順の一例を説明していきます。

①相談

まず、自社の買収戦略を練り、明確化をして自社の事業内容や今後のビジョン、買収したい企業の条件などを相談します。企業買収で成功している企業は、戦略的に獲得したい経営資源を明確にし、ターゲット候補を絞り、仮設的に検討していることが特徴です。

企業買収には実行の時間が限られていることが多いため、各プロセスを効果的に機能させるためには専門チームにて事前準備と戦略的仮説が重要となります。

そもそも、自社のミッションや理念、5年後、10年後に目指す事業領域から考えて企業買収が絶対に必要なのか?自社の強みが活かされるのか?パートナリングの可能性や市場のポテンシャル、市場の成長スピードや先行者優位なども十分に考慮して実行する必要があると言えます。

②情報収集

仲介業者のデータベースなどから、情報を受け取ったり、自社情報を載せたりして買収ニーズを配信します。

日本企業の場合は、金融機関に案件を持ちかけられて検討するケースが多いようですが、それだけではなく、自社の基準を明確にし、検証項目のガイドラインに沿って選定基準を設けていく必要があるといえます。

③仲介業者より匿名での提案

買収ニーズに合致する企業が出てきたら、企業が特定されない匿名でまず情報を受けます。

④秘密保持契約締結、ネームクリア

情報を受けた企業で前向きに買収を進めたいと思えたら、秘密保持誓約書を締結して、対象企業が承認後、企業の詳細情報を開示していきます。

最初に締結する契約が、覚書や基本合意書といった契約でも、その条項に秘密保持契約が含まれていることが大半です。

企業買収は関係者や対象企業の事業、資産に多大な影響を与える一大イベントでありますので、取引内容を公表するまでの間は、取引の存在や内容を秘密にしておく必要があります。

秘密保持契約の対象となる情報は、第三者への開示や目的外使用は禁止されています。それを保持している当事者にとっても自由に扱うことができません。

⑤条件交渉、経営者面談

経営者間にて条件交渉を開始します。事業内容や、経営面、企業文化などを双方の理解を深め、買収希望額やその他の諸々条件について交渉を開始します。

⑥買収意向表明書提示

⑤の交渉がまとまったら、買収意向書を提示し、今回のM&Aの目的や今後の経営方針、買収希望額などを明記します。場合によっては、複数の企業が買収意向表明を出す入札形式になります。

⑦買収仲介依頼書締結

仲介業者と仲介依頼契約書を締結し、正式に依頼後、買収意向表明書を基にさらに条件交渉を行います。

⑧基本合意書締結

諸条件が決定次第、基本合意書を買収側、売却側で締結します。案件により内容は異なりますが、

  • 取引の内容やスケジュールの確認事項
  • 相手当事者に独占交渉権の許容
  • 買収側が行う監査の売却側の協力

などを記載するのが一般的です。

注意点は、あくまでも交渉段階における締結内容であり、取引内容に関する最終合意ではないということです。もし取引内容に関する条項が記載されていても仮の合意内容になります。

独占交渉権の許容を記載する理由は、もし、検討段階や監査などで多大なコストを投入して進め、交渉を打ち切られた場合のリスクを下げるためです。

逆に売却側は、オークション形式などでより有利な立場で複数の企業と交渉したいことから、この条項に対して消極的であるケースが多いようです。

⑨買収監査実施(デューデリジェンス実施)

提出された資料の精査、確認作業に入ります。自社の公認会計士や監査法人による買収監査を行います。

この監査結果で100%のリスクを発見することは困難ですが、事前にターゲット事業領域の環境調査をしておくことで、懸念されるリスクを洗い出し、専門家にアドバイスを聞くことはできますので、買収監査前にも準備していくことが望ましいでしょう。

また、買収監査中に、噂を聞きつけた優秀な人材が退社してしまうと言うケースも少なくありません。情報漏れと、リスク防止に事前に手を打っておくことも必要です。

⑩最終条件確定→最終条件締結、調印式

引き継ぎ、新体制スタート

買収監査の結果を踏まえて、最終的な買収条件を確定し、買収後の役員構成や取引先、従業員への情報開示のタイミングなどを売却側企業の経営者と協議します。

最終契約を締結し、調印式を実施、代金決済などの支払いをし、その後、会社を譲り受け、引きつぎ、新体制がスタートします。

株式譲渡の場合は、株式譲渡契約書を締結し、譲渡を進めます。

運営開始の際は、組織、人事の統合やルールの統合、ITシステムの統合、事業所統合、情報開示などを経ていきます。

3.企業買収成功6つのポイント

①買収戦略を明確にする

企業買収に成功している企業はこの戦略が明確になっています。失敗する事例に多いのは、なんとなく、事業規模拡大のために持ちかけられた案件を検討するケースです。

企業戦略に対して、企業買収がどういう位置付けなのか?またどのステークホルダー(株主、顧客、社会等の利害関係者)に対して最も貢献したいのか?を明確にする必要があります。

そのための利益追求、売上追求、長期成長優先、経営の安定化などのテーマが挙げられ、どの経営資源(人材、取引先、技術、商材、情報、ブランド等)が必要なのか?を絞り込んでいくのが一般的です。

②案件情報の収集

成功のためには、ある程度の情報量を集めて判断することが求められます。情報量が少ないと、お互いにシナジー効果が十分に得られないまま買収となってしまうケースがあります。

専門のコンサルタント、仲介会社、金融機関も情報収集に活用しながら、自社の買収ニーズをよく伝える必要でしょう。

③交渉を上手に進める

売却側の経営者は会社と事業を我が子同然に扱い、育ててきています。中小企業であれば特に創業者経営者であればなおさらその思いは強いでしょう。

それを買収するのですから、買収側も十分な配慮が必要であり、礼儀を欠いた交渉では信頼関係を構築することができません。

また当然ですが、売却側も高価格で売却したい、従業員や取引先にもメリットが欲しい、個人保証や担保を外したい。などの期待があります。それを十分に受け止めた上で自社の要望を伝える必要があるといえるでしょう。

④シナジーを正しく精査する

シナジー効果は、企業買収の重要項目ですが、シナジー効果の想定と実現では大きな差があるケースが多く、実際に買収、引き継ぎ、運営開始となれば想定段階とは別物の問題が顕在してくることはよくあることです。

よくある事例は、お互いの商材をお互いの顧客に販売するクロスセリングをメインのシナジー効果に想定していたのに、各顧客のスイッチコスト(他商品に乗り換える際に生じるコスト)が実際は予想以上で、ほとんどシナジー効果が得られなかったケースがあります。

⑤適正な買収価格での取引

買収価格は、現在の事業業績、財務内容、シナジー効果や将来の事業計画を考慮して決定し、その際は、投資資金を回収できるように買収価格が過大とならないように客観的に評価する必要があります。

注意しておきたいのは、過去の成長性が将来の成長性を約束することはなく、永続的な成長は実際にはないということです。

その一方で魅力ある企業に対しては複数の買収企業が手を挙げることは多くあるケースで、通常の相場価格を大きく下回る価格では買収ができないというのが一般的です。最高値段でないと、買収できないようなケースもあります。

買収先の企業価値を客観的に精査して、相場価格前後で適切に設定して交渉を進めるべきでしょう。また仲介業者などに支払う手数料も予算に入れるべきでしょう。仲介業者によっては、着手金や中間金、成功報酬金の制度が異なるので注意して選択すべきです。

⑥買収後の経営責任を明確にする

企業買収は買収成立後の運営が難しく、困難であると言われています。買収後の経営を行う部門、人材の配置を適切に行わないと、効果的なシナジー効果が現れないケースがあります。

買収後の経営統合作業、経営手法の移植、シナジーの創出を見据えて経営責任の所在を明確にする必要があり、買収の検討段階やデューデリジェンスの際に買収後の経営部門がきちんと関わる必要があります。

また売却側の従業員のケアも重要です。いかに安心感と、従業員の特性を生かした配置やモチベーションを高めてあげるかを考慮しなければいけません。

あるデータによると、企業買収が失敗に終わったと考えられる買収のうち、約30%は企業文化の融合が困難だったというデータもあります。異なる文化を持つ企業の買収は迅速な意思決定や効果的事業運営が難しいケースも多いようです。

やはり企業は人ですので、買収後のマネージメントにふさわしい能力と責任を任せられる人材が経営にあたるべきでしょう。

4.企業文化について

企業買収の成功の可否を決める重要ポイントである企業文化の融合ですが、さらに内容の詳細をみていきます。

①企業文化とは何か?

企業やその団体において暗黙的に共有されている価値観で、その企業に属する人の態度や考えに影響を及ぼし、長期間にわたって存在し続けるものです。

特徴は実態がなく、暗黙的であるということです。すでに共有している人々にとっては自ら認識することは困難であるといえます。さらに普段その文化を共有していない人にとっては、暗黙的ではありません。

よく外部監査などの外部の人が鋭く洞察できるのは、普段その文化に染まっていないからだと言えます。

②企業文化の行動や判断への影響

企業文化はまるで空気のように存在しているので、そこに集団心理が働きます。特に村社会の日本企業では大多数の意見に従う傾向が強いようです。

企業文化は信念や振る舞いに大きく影響し、集団の大多数が良しとなれば正当になり、それがなぜ正当なのかは説明が困難です。さらに自分たちとは異なる振る舞い方について思いを巡らすことが難しくなります。

③企業の買収、統合にはどう影響があるのか?

もし買収による企業の統合がある場合は、事前にシナジー効果、財務、売上、利益などビジネスの数値的な観点から分析をしていきますが、数値化できるものだけで判断すると非常にリスクが生じると言えるでしょう。

なぜなら、実際に買収、統合を進めていくのは、生身の人間であり、人の思考や感情が大きく影響します。それは数値化できないものです。企業を形成する経営陣や社員、取引先も企業文化に根ざした思考、判断、感情の動きがあります。

非常に難しい部分ですが、企業買収の成功例を見るとき、企業文化の融合を上手く導いている企業は成功しているケースが多いといえます。それほど、企業文化が企業を形成する人間に及ぼす影響は計り知れません。

5.企業文化統合への対策

多くの企業が買収前のデューデリジェンスにおいては、測定可能な財務的な観点のみ焦点が絞られがちです。企業文化を数値化することは非常に困難といえます。ではそんな中どう企業文化融合を対策していったら良いかを見ていきましょう。

①統合後のマネジメントを文化統合を最重要課題とする

多くの企業が、買収後は従業員間のコミュニケーションのみで文化統合を進めようとしていますが、これでは戦略的観点が乏しく、個々の動きで終わってしまいます。

買収、統合に深く関与する経営陣、または専任のチームを組んである一定期間戦略的に文化統合を進めることが望ましいと言えるでしょう。

一般的に用いられるのは、評価制度、給与格差、人事労務制度の統一を従業員の意見も聞きながら進める手法です。

②外部より、人事、組織開発のプロを呼ぶ

統合する双方の企業文化を代弁する専門家を呼び、考え方を第三者に代弁させ、文化に対する取り組みの重要さを啓蒙していきます。定期的なミーティングにて常にアジェンダとして盛り込むなど、ディスカッションの場を設ける方法です。

③企業文化に妨げられない意思決定プロセスの確立

意思決定のスタイルは買収、統合前は双方の企業文化に根ざしているケースが多いですが、買収、統合後は意思決定がスムーズにならない場合は、従業員のロイヤリティ問題につながるケースがあります。

一般的には、「統合領域における意思決定者を選定する」「双方の意思決定スタイルを理解し、新しい決定者をサポートする体制を作る」などですが、これも正解はなく、模索しながら構築していく必要があります。

以上の他に、従業員のモチベーションを上げる新ブランド作りや、従業員間のチームワークにより、成功体験を積み重ねていくなどありますが、一番の失敗例は、買収した企業が一方的に自社文化を売却側従業員に押し付けることです。

これでは、到底従業員に受け入れられませんし、最悪大量離職という事態になりかねません。事業価値の向上という観点からも企業文化の融合は最重要課題と言えます。

5.まとめ

以上のように企業買収には、買収、合併、分割、資本提携などの方法があり、買収の目的や状況などによってとる方法が変わってきます。

また買収手順においても、慎重かつスピーディに専門家と進める必要があり、特に事前準備や契約面では注意が必要と言えます。

成功へのポイントは、既に述べたように戦略の明確化、情報取集、訂正価格での買収など交渉面でも成否を分けるでしょう。

企業文化面の融合など、専門的かつ、関わる人の考え方、感情の面でも関わる全ての人がメリットを享受できるように総合的に進める必要があります。