誹謗中傷の訴訟時に権利侵害として利用できる事例一覧

インターネット上では、多くの情報が飛び交っています。残念なことにその中には誹謗中傷といった、そのままにはしておけないものが存在しています。

もし、自分が誹謗中傷の対象になってしまったとしたら、一刻も早くその記事を消してしまいたい、、、と考えるのが当然だと思います。

しかし、気に入らないから消してくれという理由で消してもらえるほど、世の中単純でも簡単でもありません。書き込みした人が削除に応じない時など、感情で攻めるよりも法的な根拠を持って攻めた方が、ずっと早く解決することができます。

しかし、法的な根拠と言われても、どんなものが根拠になるのか、くわからないというのが普通だと思います。そこで、誹謗中傷に対応することができる法的根拠にはどんなものがあるのかまとめましたので参考にしてください。

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1.名誉権

名誉というと、一般人には関係ないと考える人もいるかもしれませんが、そうではありません。

名誉とは、人の品性、名声、信用、徳などの社会から受ける客観的評価のことで、幸福追求権の一環として憲法上保障されています(憲法第13条)

つまり、周囲の人からどのように思われているか、見られているか、評価されているかが名誉の判断基準となります。

この名誉を傷つけて、社会的評価を低下させることが名誉権の侵害となります。名誉権は個人だけでなく、法人にも認めれています。

法人も社会で活動する以上、社会的評価の対象となるからです。勘違いをしやすい点として、社会的評価の低下があればすぐに名誉権の侵害となるかというとそうではありません。

例えば、犯罪を犯したAさんという方がいたとします。この時にAさんが犯罪者と書くことは単に事実を述べただけのことです。

憲法で表現の自由を保障されているので違法にはあたりません。
(憲法第21条

ただ、これが事実無根のでっち上げであれば、誹謗中傷として許されることではありません。当然、名誉権の侵害となります。

しかし、事実であれば、その情報を知ることで、知った方の自己防衛に繋がる可能性もあり、社会にとって有用な情報といえます。このような場合には名誉権の侵害は成立しません。

一定の要件を満たした場合において、権利の侵害が成立しないことを「違法性阻却事由」といいます。この場合の違法性阻却事由を簡単に言うと事実を言ってるだけだから、名誉権の侵害にはならないということです。

ではどのような場合に、名誉権の侵害が成立しないのでしょうか。名誉も表現の自由もどちらも憲法で保証された権利です。ですが、前述の例のように衝突する可能性が高い権利でもあります。

そこで両者を調和するために刑法第230条の2により、名誉権の侵害が成立しない要件が定められました。具体的には、次の3つの要素をすべて満たす場合には、名誉権の侵害とはなりません。

①摘示された事実が公共の利害に関するものであったこと(事実の公共性)
②摘示の目的が専ら公益を図ることにあったこと(目的の公益性)
③事柄が真実であることの証明があったこと(真実性の証明)

それぞれについて簡単に補足します。

①摘示された事実が公共の利害に関するものであったこと(事実の公共性)

先程の例に出したように、犯罪者に対して犯罪者と言うとか詐欺師に対して詐欺師と言うのは、それを知らない人が被害を受けてしまう可能性を考えると公けにする方が良いと考えられます。

新たな被害を起こさない為に必要なことだと言えるので、公共の利害に関するものとなります。ですので、犯罪者に対して犯罪者というのは名誉権の侵害とはなりません。

②摘示の目的が専ら公益を図ることにあったこと(目的の公益性)

公益というは公共の利益です。どんなものがそれにあたるかというと、例えば、政治家の資質を問う目的でスキャンダルを報道するような場合です。

醜聞を広めることは、個人のプライバシー権や名誉権を侵害する行為ですが、政治家の人格を知ることは公共性高いという観点から名誉権の侵害には当たらないと判断されています。

③事実が真実であることの証明があったこと(真実性の証明)

客観的に真実と判断できる証拠がある場合には、これも名誉権の侵害には当たらないと判断されています。

単に事実が書かれている場合は問題ないのですが、ある事実を元に意見や感想が書かれていた場合には慎重に判断する必要があります。

意見や感想の根拠となった事柄を確認してそれが事実であり、その事実から容易に推論できると判断できれば、名誉権の侵害とはならないとされています。

事実関係を良く確認しないで、また聞きの情報で書き込みをしたりすると大きな問題に発展する可能性があるので注意が必要です。

2.名誉感情

名誉感情というのは、自分自身の価値に対して感じている感情や意識のことです。通常、プライドとか自尊心と言われるものです。

感情という個人差のあるものなので、個人の性格によってかなり違いがでます。

例えば非常に傲慢な人であれば、些細なことでも大騒ぎするでしょうし、逆に謙虚な人であれば、少々のことは気にも止めないでしょう。

そこで、名誉感情については、法的に保護されるものではありますが、保護される場面にはある程度の制限が設けられています。誰が聞いても名誉感情が害されていると言えるような明白な侵害があった場合に認められるとされています。

例えばブログなどに、延々と『バカ』と書き続けられた場合などが考えられます。抽象的で少しわかりにくいかもしれませんが、限度を超えているとみんなが判断できるようなくらい酷いものでないと、認められるのは難しいと考えた方が良さそうです。

また、名誉権は法人にもありますが、名誉感情については、法人には認められないというのが一般社会通念となっています。これは法人には感情がないという考えがある為です。

3.プライバシー権

『プライバシー』は非常に重要で保護すべきものですが、法律上は『プライバシー権』という規定がありません。社会の発展とともに、判例において『権利』として認められるようになったものなのです。

最初にプライバシー権というものを認める判例が出たのは『宴のあと』事件(東京地裁昭和39年9月28日)です。

ここで初めて、私生活上の事柄をみだりに公開されない法的保障・権利が認めれました。プライバシー権として保護されるには、次の3つをすべてを満たす必要があります。

①私生活上の事実または私生活上の事実らしく受け取られるおそれがある事柄であること
②一般人の感受性を基準に公開を欲しない事柄であること
③一般の人々にまだ知られていない事柄であること

例えば、リベンジポルノのように、自分のプライベートな性的写真が公開された場合がまさにこれにあたります。最近では、氏名や住所といった個人情報も、プライバシー権の範囲になると解釈されるようになっています。

ただ、すべてをプライバシーとして保護してしまうと他人に対する批評もできなくなってしまいます。

そこで、その事実を公表されない利益と公表する理由とを比較して、公表する方が社会的利益が大きいと判断される場合には、違法性阻却事由を理由にプライバシーの侵害にはならないとされます。

また、企業などの法人については、プライバシー権は認められないというのが一般的です。

法人にも公表されたくない事柄があると思いますが、保護されるのは、名誉権、知的財産権、不正競争防止法等の
問題に限定するべきと考えられています。

4.肖像権

肖像権とは、みだりに他人から写真を撮影されたり、それを公表されたりしないように誰に対しても主張できる権利のことです。

肖像権には、2つの要素があります。1つは「人格権に基づいた肖像権」、もう1つは「財産権に基づいた肖像権」です。人格権は、「個人の人格的利益を保護する権利」とされています。

信用や名声などが人格的利益とされています。

人格的利益の侵害行為が、プライバシー権の侵害と考えることが出来るように、「人格権に基づいた肖像権」は写真などの肖像を公開されることでプライバシーが侵害される恐れがある場合に行使されるものです。

「財産権に基づいた肖像権」を正式には「パブリシティ権」と呼びます。タレントやアイドル、スポーツ選手は、
その存在感だけでお金を稼ぐことが出来ます。

名前や外見が知られている個人は、自身の肖像を広告に組み合わせることで、広告の持つ顧客求心力を高めることが出来るからです。

このように、芸能人などが持つ顧客求心力の価値を保護するのがパブリシティ権です。簡単にまとめると、肖像権には次の3つの権利が含まれていると考えられています。

①みだりに撮影されない権利(撮影の拒絶)
②撮影された写真などをみだりに公表されない権利(公表の拒絶)
③肖像の利用に対する本人の財産的利益を保護する権利(パブリシティ権)

最初にお伝えしたように、プライバシー権と似た要素がありますが、異なる点もあります。

例えばプライバシー権では、撮影された写真が公表されて初めて権利侵害となりますが、肖像権には撮影の拒絶が含まれている為、写真を撮っただけで権利侵害が発生します。

ただ、実際に問題となるのは、ネットなどに公開されてからとなることが多いので、プライバシー権と変わらないと考えても差し支えないと思います。

5.著作権

著作権とは、思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、美術または音楽の範囲に属するものについて生じる権利のことです。

著作権は、その表現を作り出した時に自動的に発生するとされているので、どこかに登録をしなくても成立します。この部分が特許権と大きく異なります。

ただ、「私的使用」(著作権法30条)と「引用」(著作権法32条)の場合は、著作権の侵害とはなりません。

私的使用とは、「個人的にまたは家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること」とされているため、個人的に使用する為に著作物をコピーしても著作権の侵害には当たりません。

但し、これらの著作物をインターネットなどで公開すると、著作財産権のうちの公衆送信権という権利を侵害することになります。

そのままインターネットに公開すれば、問題になるとわかっている人でも、加工して公開してしまうことがあるので注意が必要です。

例えば、自分で作った動画にインターネットでダウンロードした音楽を付けて公開した場合は著作権の侵害となります。

このような場合には、著作権フリーの素材を使うようにしてください。

引用についても、正しく理解されていない方が多いので注意が必要です。引用として認められるには、下記の事項を満たす必要があります。

①公表された著作物であること
②公正な慣行に合致すること
・引用の必要性があること
・どの著作から引用されたものなのか明示されていること
・著作者の意に反する改変をしていないこと
・その分野の慣行に従っていること
③目的が正当な範囲にあること
・引用された部分が明確であること
・引用する側が「主」で、引用される側が「従」と言える関係にあること。

ネット上のコンテンツでは、この条件を満たしていない引用が非常に多いので引用をされる場合には十分に気を付けてください。

6.商標権

商標権とは、商標の登録を受けることで、指定された商標またはサービスについて独占的に使用できる権利のことです。

商標権は著作権と異なり、特許庁に登録することによって初めて権利となります。

商標が似ているかどうかの判断基準としては、商標の見た目(外観)、読み方(呼称)、一般的な印象(観念)に加えて、取引の実情などを考慮して、総合的に類似の恐れがあるかどうかを判断しています。

外観が似ていると判断された例では、
「Libbys」と「Lilys」
「北の花」と「六の花」
「Single」と「SINGER」
「大森林」と「大林森」などがあります。

呼称が似ていると判断された例には、
「SIMPO」と「SHINPO」
「菊正宗」と「金盃菊正宗」
「シエーン」と「紫苑」
「エースチョコ」と「チョコエース」などがあります。

観念が似ていると判断された例には、
「ふぐの子」と「子ふぐ」
「マイクロダイエット」と「マイクロシルエット」
「ケンコー」と「ヘルス」
「東京っ子」と「江戸子」などがあります。

商標権侵害の判例については、
下記のサイトで確認することができます。

商標判例データベース
http://shohyo.hanrei.jp/

外観・称呼・観念の類否判断にあたっては取引の実情が考慮されることになっています。

また、外観・称呼・観念のいずれも類似の程度が高くなくても、取引の実情を考慮すると紛らわしいと認められる場合があります。

例えば、
「大森林」(石けん類、歯磨き等を指定商品とする)と、
「木林森」(シャンプーに使用)を最高裁判決は類似と判断しました。

判決の中で以下のように述べてられています。

綿密に観察する限りでは、外観、観念、称呼において個別的には類似しない商標であっても、具体的な取引状況如何によっては類似する場合があり・・総合的な類似性の有無も、具体的取引状況によって異なってくる場合もある。

本件については、両者は、いずれも構成する文字からして増毛効果を連想させる樹木を想起させるものであることからすると、全体的に観察し対比してみて、両者は少なくとも、外観、観念において紛らわしい関係にある。

このように一見、似ていないと思えるものでも、類似との判断が下されるケースもありますので、注意が必要です。

7.まとめ

いかがでしょうか。ご自身に権利があるものがたくさんあることに気付いて頂けましたでしょうか。交渉をする際に法的な根拠があるのとないのでは、相手の対応がまったく違います。感情に訴えるだけでは、進まないことでも法的な根拠を示すことで、円滑に運ぶことが多々あります。

今回はほんの触りの部分しかお伝えできていませんが、こういうものがあると知って頂くことで事態が好転することがあると思います。


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